第31話 探索
小春日和の日が射し込む教室で眠い顔をした友達が深いためいきをついた。
「昨日も探索したんだ?」
問いに友達はうなずく。
「…もっと深層まで行こうと思って…」
「わかってると思うけど」
「だいじょうぶ。無理はしないから」
そう言って、友達はあくびをした。この調子なら今夜も探索に行くだろう。止めたほうがいいんだろうけど、友達の気持ちを考えると、なにも言えなくなった。
私と彼女は親友で、ここにもうひとり、いた。
いつも夢を見ているタイプで、ああなればいいな、こうならいいな、と現実よりも夢を語っていたもうひとりの親友。
彼女は語りすぎたのだ。
夢を見る友は夢に囚われ夢の中から出てこられなくなった。
ここは全寮制の学校なのに、ある日から彼女は姿を消した。囚われたために。
今までそういう人はたまに出る。
救出するには誰かが己の夢の中で彼女を見つけて連れ出し、一緒に目を覚ませばいい、ということはわかっている。
もちろんこれはかんたんな話じゃない。まず毎晩夢を見られるわけがないし、夢の中で人を捜すのは集中力も必要だ。専門の病院では夢見人(ゆめみびと)の治療として催眠術で夢の中から救い出す方法がある。かなりの専門知識がなければ成功しにくいらしい。放っておけば、そのまま行方不明者扱いとなる。
私たちは友達を行方不明にするわけにはいかない。大事な友達なのだから。でも無理はぜったいにしちゃいけない。ミイラ取りがミイラになることは回避しないと。
まず、今夜の探索は私がしよう。交替で夢の深層に迎うだけでもおおきいはずだ。夢を見ることができるだろうか。友達を見つけることができるかな…。
ぼんやり寮の廊下を歩いていると背中をかるく叩かれた。男友達がそこに立っていた。
「よう! また弱気になってんのか?」
「ほっとけ」
「まあ心配になるけどさ、ひとりじゃないんだし、諦めんなって!」
「…」
「事情を知ってる奴は俺だけじゃない。協力するつもりだぜ?」
そういえば、そうだった。
クラスメートの一部は、夢の探索を知っていて、ひそかに手伝ってくれたりしている。
私たちだけじゃない。ひとりじゃないんだ。
うん、とうなずいた。
ひとりじゃないって、こんなに心強いんだな。
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