第12話 下校風景

 今日もひととおりの授業は終了。最後のとどめに多量の課題を出されてげんなりしたけど、やっぱり学校から解放される時はうれしい。クラスメートたちは早々に教室を出ていく。

「じゃーねー」

「ばいばーい」

「ねえ、このあと…」

「彼氏来てるよ」

 楽しげにドアをくぐっていく人。

 窓から手を振って、あわてて出ていく人。

 持ち込んでいた日本酒を飲んでご機嫌な人。

 壁に背中をつけたと思ったら、壁ごとひっくり返っていなくなる人。

 先生に隠していた猫の耳をぴんと立ててしまう人。


 私も帰ろうとしたら友達が声をかけてきた。

「一緒に帰る?」

「あ、ごめん。ちょっと寄ってくところあって」

「そっかー。じゃあまたねー」

「うん、また明日」

 友達は手を振ると身を糸のように細くして、天井に開いている穴に吸い込まれていった。うちのクラスはいろんな人がいるけど、糸になる子は彼女しかいない。

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