第19話 ガチ

 戦争はすぐに終わった。流石はたっきの作戦だ。

 だが、戦争を引き分けで収めるには、代償が大きかった。

 多くの犠牲者を出し、財産が水の泡となり、戦った者も、勝利を願い日々を過ごした者も、明るく振る舞う事はなかった。

 更に……、たっきが死んだ。


 ――――――――――――


「ここまでが、終戦の英雄『古井哀ふるいあい』の記した書物。『転生記』だよ」

 本を閉じ、ユーリ・マギウスさんはお茶を飲んだ。

 既にライジング・サンし始めている。

「成程。んで、それが冒険者とどう言った関係が?」

「それよりツッこむべきところがあるんじゃないかい?」

 そう言うとユーリさんは立ち上がり、

「たっきの作戦ってなんなんだ!」

 ……叫んだ。

「は、はぁ……。まあ確かに」

「中途半端なアレで書き終わりやがっちゃって! 一番重要なとこやろう! 何がしてったがや!」

 もう、口調がごちゃごちゃだ。方言なのか、なんなのか……。

「まあ、確かにそこも気になるんですけど、今はそれより。その話がどう、冒険者と繋がるんです?」

「ああ!? あ、ああ」

 少し落ち着きを取り戻したようだ。

「コホン。この話をした理由だね」

「は、はい」

「それでは」

 もう一度お茶を飲んだ。

「この本の作者。古井哀の能力は覚えているかな?」

「はい。不死ですよね」

「そう。絶対に死なない能力だ」

「そうか! つまり、彼はまだ生きている」

「ああ。不死が外部からの攻撃に限る防御能力だとしても、歳を考えると寿命は来ていないだろう」

「じゃあ、それが冒険者とどう繋がって――」

「彼を見つけてくれ」

「は?」

 何を言っているのかわからない。研究のし過ぎで頭が狂ったのだろうか。

「恐らく彼はまだ生きている。だから、彼を見つけて連れて来てくれ」

「な、何を」

「その為に君にこの話をした」

 ユーリさんはニッコリと笑った。

 冒険者の話をしろよ。

「え、じゃあ、冒険者は……」

「それについてはわからない」

「え」

「私は考古学者であって、心理学者ではない。昔の出来事は知っていても昔の人の考えまでは知らないよ。冒険者が嫌われているのはおおむね、「皆が嫌うから」という大衆性からだと思うが」

「あ、ああ。そうですか」

 なんて言い返せば良いのかわからない。

「それなら、僕はこれで」

「ああ。楽しかったよ」

「お茶、ごちそうさまでした」

 そう言って廊下に出ると、疲れた様子のエフェナが眠っていた。一晩中父親の世話をして疲れたのだろう。まあ、今日は日曜日で、大抵の小学校は休みだろうし。いいんじゃないかな。

「そういえば、この子は小学何年生なんですか?」

 ふと気になって聞いてみた。

「エフェナは君と同じく、中学三年だよ」

「は?」

「ちっちゃいだろう」

 そう言って笑うユーリさんを、俺は理解出来ないと全力で表現した顔で見つめる。

「今日ってエイプリルフールでしたっけ?」

「嘘偽りなく、彼女は中三だ」

 このチビッ子が同い年とかマジか。

 いや、この世界では飛び級があるのか? 学者の娘なら出来ないことは無さそうだが。

「なんなら、嫁に貰うかい?」

「はぁ!?」

 冗談だと笑うユーリさんは、どこか少年に戻った様な表情で、だが、娘を思う父親の顔だった。

「……それじゃあ」

「ああ。エドルによろしく」

 そうやりとって、俺はマギウス邸を後にした。

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