第18話 永久(とわ)

 不死。死なず、永遠に生きる事。太古と言えば大袈裟おおげさかもしれないが、人々は昔からこれを追い求めてきた。

 かの卑弥呼ひみこも。かの藤原道長ふじわらのみちながも。かの織田おだ信長のぶながも。

 そして、現在の人々も。永遠に生きたいと願う者は少なくない。

 そんな夢を、俺は「目が覚めたら手に入れてましたー」感覚で掴んで良いのか?


「今、不死って言った?」

「言いました」

「ワオ」

 どうやら聞き間違いではないようだ。いや、漢字が違ったり?

「フシって、死なない『不死』? お父さんと子供の『父子』? それとももっと別な……」

「死なない『不死』です」

 デスよねー。HAHAHA。

 え、じゃあ何? 俺死なないの?

「俺もしかして、この戦争において最強の兵士になったりして」

「死ぬほど痛いですがね」

「たっき。戦争はやっぱりイケナイ事だよ。ここは尻尾まくのが安ぜ」

「イケナイからこそ俺たちが終わらせるんだ!!」

「……」

 唾を飛ばしながらたっきが俺に怒鳴る。

 たっきがこれまでこんなに熱気を出したことあったか?

「わ、わーったよ。俺たちで終わらせよう……な?」

 正直あまり乗り気ではないが、この熱気には勝てない。

「それではお二人とも、頑張ってくださいね〜」

 女神マウテードはそう言うと、静かにしゃがんだ。気が付かなかったが、足元には……八歳くらいの、マウテードに良く似た少女がいた。

「こうやって、異世界から勇者となり得る人を連れだす。これが私たちの仕事です」

 勇者となり得る? その勇者とは、何の勇者なのか。魔王でもいるのか。それとも、この戦争を終わらせればいいのか。

 マウテードは少女に対して続けた。

「貴女も大きくなったら、たくさんの人をこっちに連れてくるんですよ。わかりましたか?」

「はい。お母様」

 どうやら少女はマウテードの娘のようだ。道理で似ている。

「いい子ですね。メテナド」

 マウテードは微笑んで言うと、娘……メテナドと共にどこかへ消えてしまった。

 二人が見えなくなると、今まで雑音としか耳に入っていなかった町民達の声が、一文字一文字聞こえてきた。多くの声が混ざり合い、何を言っているかは分からなかったが、耳が音を拾う範囲の声、全てが脳まで侵入してくる。

「……しっかし、不死とはな」

 途端にたっきが口を開いた。

「あ、ああ。まさかこうも簡単に手に入る力だとはな」

「簡単過ぎて怪しいがな」

「はは……」

 いきなり色々な情報が集まってきたので脳の頭の整理がつかず、脳まで声が届いても言葉を理解する事を体が勝手に避け、適当な返事しか出てこない。

 えっと……。俺は不死身で、今から戦争に行く。簡単にいえばこれだけか。だが、どちらもデカすぎる情報だ。

「あいっち。大丈夫か?」

 たっきが俺を気遣っている。理解できた。だんだん自分も落ち着いてきたのだろう。そんな事も自分で確証を持てないとは。

「ああ。大丈夫だ。事が大きくて少し考えこんでた」

「無理しないでくれよ」

 俺はただコクリと頷き、近くにあった椅子に腰掛けた。

「んで、たっき。戦争行くのはいいが、どうやって行くんだよ」

「ああそれな」

 たっきはフフッと笑った。

「ん?」

「俺にいい考えがあるんだ」

 そう言った時は大体良くない意見だ。が、今はただ、たっきを信じる事にしよう。今頼れるのはたっきと、不死の力だけだ。

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