Chap1-4 岩田紀夫

10月20日 立川署刑事課長の岩田紀夫は、3日前おこった"水鳥の池バラバラ死体事件"特別捜査室長に任命された。そもそも第八方面本部の特殊犯罪対策官を兼任していた岩田にとっては当然の成り行きとも言える。


それより、なにより岩田を悩ませているのは、3日前からかかってくる殉職したはずの友人の携帯からの着信だ。


この殉職した友人は、岩田の幼いころからの親友で、幼稚園から警察学校まで一緒、果てに本部の特殊犯罪対策官を早くから射止めた岩田に対し、彼は国際組織犯罪対策官に就いた。


二人とも、エリート中のエリートで、出世街道を爆進した。

だが、その友人は10年前にフランスのインターポールの本部に出向中、組織犯罪に巻き込まれて殉職したと聞かされていた。


岩田は念のため、友人の電話番号を調べてみたところ、番号は生きており毎月の使用料も振り込まれているとの事で、なんとも不思議なのは、端末は発売されたばかりのiPhoneXで、発信ポイントは“月”だっと言う事だ。


今日は幸い着信が無いと安心していたところの17:30に、今度は彼からショートメールが届いた。


“お前のところの管内で強烈な猟奇事案が発生中だよな。あれのホシを知ってるぜ”


岩田はこれを見て、ついに電話をかけることを決意した。


「只今、呼び出しております。」

後ろに流れているのは、Van Halenの「ジャンプ!」

“そういえばあいつヴァン・ヘイレンのファンだったっけか…”

ワンコーラス終わる前に電話はつながった。


「よう、久しぶりだな」機械的な音声が答える。

「なあ、あんたいったい誰なんだ。」

「お前の昔からの親友、斎藤或人だぜ。」

「機械音じゃねえか!ふざけてんのか?しょっ引くぞ! 大体、斉藤或人は10年前に死んだ筈だ!!」


「死んでないし、本人だ。何ならお前と俺だけの秘密を語ってやろうか?

①、小学校で、お前がうんこを漏らした時に、俺は自分のパンツをお前にかしてやったよな。

②、高校の時、俺の彼女に俺に内緒でラブレターを送ってフラレたよな。

③、警察学校時代に10円ゲーム屋にはまったお前を叱って、正しい道に戻したのは俺だ!

どうだ!全部お前と俺しか知らない事だろ!」


「まいった!確かにお前は“或人”だ。

しかし、なんで死んだお前が電話に出れるんだ?」

「だから言ってんだろ!死んでないって。

NPSCから聞いてないのか?死体が出てないって。

殉職扱いなのはフランス人が雑だからだ!」


「ところで、今回の事件のホシはどいつなんだ?国際テロリストか?」

「う~ん国際テロリストと言いよりは、宇宙海賊と言うか・・・」

「宇宙って何のことだ?」

「異星人だ!」


その時、特別捜査室のスピーカーが鳴った

「昭和公園にて殺人事件発生! 目撃者が犯人に追われてる模様!急行してください。」


岩田はすぐに「電話をこっち(スピーカー)にも回してくれ!」と指示を出すが、

「既に切れました。録音を流します。」


*------------スピーカーより-----------------*

「殺人!人が殺されたの!昭和公園の動物園で!」

 「落ち着いて!その場を動かないで!」

「無理!追いかけられてる…また増えた!」

 「今どこですか?あなたはどんな格好?」

「今、西立川過ぎたところ。自転車二人乗り!」

 「犯人は何人?どんな人」

「多分4匹…ムカデ!多分!透明の!!」

 「落ち着いて!すぐ行きますから、頑張って!」

*-------------------------------------------*


「なんじゃそりゃ?」

岩田は、電話がつながっていることを忘れたまま呆然と立ち尽くす。


「おい岩田、聴こえてたぞ!今、お前んところはかなりやばい状況だ。」

斎藤或人だと思われる声が割れんばかりの機械音で岩田の携帯を震わす。


「今回のホシだが、とてつもなく強い。そして数もいる。触れるものをすべて殺戮するような性格のくせ、執念深くしつこい。目撃者は立川署で保護すんなよ!こっち(本部)でやること!」

「刑事課ではなく、第八本部で保護しろとはどういう事だ?」

「立川署にはかなり一般人がいるだろ!大量虐殺起こされるぞ!!」

「あと、拳銃じゃ無理だな・・・ 倒せない」

「用意できてMP5程度だぞ!!」

「19mmじゃ貫通しない。東部方面航空隊に頼んでハチキューを借りてきて!」

「はあ、アサルトライフルって?どんだけモンスターなんだよ!そのホシは。」

「ハチキュー以外にも赤外線スコープを用意して」

「なぜ?」

「光学迷彩まとってんのよ!そのホシは!!!そんで、立川口にバリケード作って強襲班に向かわせろ。直ぐだ!今直ぐ!!」

それだけ言うと電話は切れた。


岩田はスピーカーに向け 「目撃者保護は?」

「確保した模様です。こちらに急行してます。」


「強襲班2分隊を直ちにに編成、暗視スコープとMP5を持たせろ。有ればハチキューのほうがいい!それで立川口交差点にバリケードを張れ。直ぐだ!」


(※MP5=警視庁/警察庁の特殊急襲部隊が装備する短機関銃。)

(※ハチキュー=89式5.56mm小銃。自衛隊の主力装備である自動小銃。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る