身も心も擦り切れて、いまも生に引きずられながら、それでも懸命に生きてきた一人の女。破けた箇所をつくろった心の隙間にすべり込むように、指を小さな手が握る。見知らぬ顔の幼子がいざなう先は、兇々しくも哀しげに闇にひかる、ほおずき提灯のあかり。最後まで読み通したとき、あなたも崩れ落ちるかも知れない。
鬼の灯と書いてほおずき。ほおずき表面の葉脈が血管のように見え、中心には朧げな灯が揺らめくほおずき提灯。まるで心臓のよう。紅い色。主人公の女と7歳ぐらいの男の子の物語です。ホラー作品なのですが、ホラー色よりも、どこか幻想的な雰囲気が作品全体から感じました。もちろん、ラストにはホラーが待っています。
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