真夏の秘密基地。
子供だったあのころにみんなで創り上げた
大人の知ることのない不思議な秘密基地を
僕たちはなによりも大切に思っていた
快晴の空に滲む陽炎を尻目に走りながら
はしゃいではふざけていた遠いあのころを
いまになって回想している大人の僕がいる
どうも簡単には思いだせはしないけれど
当時の僕たちは理不尽なんて感じなかった
ひとりぼっちなんてものは当たり前で
そんな少年少女がぽつりぽつりと集まり
いつしか秘密基地は大盛況になっていた
あそこにいる間は普段を忘れられたから
たくさんの思い出がそこには確かにあって
冒険を繰り広げていた毎日の懐かしさを
数多の時がすぎたいまさらになって思う
やはりすぐには記憶は戻りはしないけれど
あのころの僕たちにとっていちばん大切な
そんなものたちがあの秘密基地にはあった
猛暑日の幻の中に包まれて消えていた
吹き荒ぶように駆け抜けた丘の道を
少しずつはっきりと思いだしてゆく
透明になってわからなくなった君のことが
間違いなくこころのどこかに引っかかり
まだ前に進むことを許してなんかくれない
なにも変わってなどいないと知ったのが
最高の思い出の欠片なのかもしれなくて
子供のままでいようと踏ん張る過去たちに
これから僕はさよならを告げる時なのだ
あの夏に見ていた記憶も幻も忘れ去っては
大切ななにかを失って大人へと歩むために
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます