真夏の秘密基地。

子供だったあのころにみんなで創り上げた

大人の知ることのない不思議な秘密基地を

僕たちはなによりも大切に思っていた

快晴の空に滲む陽炎を尻目に走りながら

はしゃいではふざけていた遠いあのころを

いまになって回想している大人の僕がいる


どうも簡単には思いだせはしないけれど

当時の僕たちは理不尽なんて感じなかった

ひとりぼっちなんてものは当たり前で

そんな少年少女がぽつりぽつりと集まり

いつしか秘密基地は大盛況になっていた

あそこにいる間は普段を忘れられたから


たくさんの思い出がそこには確かにあって

冒険を繰り広げていた毎日の懐かしさを

数多の時がすぎたいまさらになって思う

やはりすぐには記憶は戻りはしないけれど

あのころの僕たちにとっていちばん大切な

そんなものたちがあの秘密基地にはあった


猛暑日の幻の中に包まれて消えていた

吹き荒ぶように駆け抜けた丘の道を

少しずつはっきりと思いだしてゆく

透明になってわからなくなった君のことが

間違いなくこころのどこかに引っかかり

まだ前に進むことを許してなんかくれない


なにも変わってなどいないと知ったのが

最高の思い出の欠片なのかもしれなくて

子供のままでいようと踏ん張る過去たちに

これから僕はさよならを告げる時なのだ

あの夏に見ていた記憶も幻も忘れ去っては

大切ななにかを失って大人へと歩むために

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