7-3

 今回は本来の用途が必要ない減圧室でボディ・チェックを受けて――担当したのは体つきからして女性だった――、机と椅子だけが置かれた簡素な部屋に通される。身分証にもなる飛行機の免許や、郵便連盟リーグの登録証なども取り上げられている。


「ねえ、何で降りたの?」


 待っている間、退屈になったのかミモリが問いかけてくる。見張りがすぐ後ろに立っているが、気にする様子もない。僕としても、機長の判断を待たずに行動したのだから、これは僕に答える義務があるだろう。


「まず、この艦は航空管理局ビュロの情報にはなかったから、どこの企業の所属かはともかく、隠密行動中なのは間違いない。その状態だと、航空艦は機密保持のために僕らを撃墜する危険性があった」

「うん、それで?」

「そう考えた時には、すでに後ろに戦闘機がいた。逃げるって選択肢はなかった。この理由は分かるよね?」

「逃げられないからだね。峡谷に逃げ込もうにも航空艦がいた」

「そう……で、今回はテスト飛行だから、こないだみたいな曲芸は絶対にやりたくない。じゃあ答えは一つだ。早々に恭順の意志を示して、うまいこと見逃してもらうしかない」

「それで強引に着艦? 何だか飛躍がない? いや、飛んでたんだけど」


 ミモリも多少混乱しているらしい。いや、もしかしたら自分の気を紛らわせるためのジョークかも。


「これ以上は、少し説明が長くなるけど」

「ああ、じゃあいいや。シラユキがそう判断したってことは、そうなんでしょ。また時間のある時に聞かせて。今は、いい」

「了解。それで、ここからが本題なんだけど」

「うん」

「このままだと、彼らの作戦行動が終わるまで拘束される可能性はかなり高いと思う」

「そうだよねえ」

「どのくらいの期間になるのかは、ちょっと予想がつかない。三日かもしれないし、半年かもしれない。さすがに恭順してきた相手を問答無用で消すような真似はしないだろうけど」

「それは困るなあ」

「だから、ここから先は交渉次第。つまり、君の出番だ、ミモリ」

「ああ、そう来るのね……」

「頼む、君が頼りだ。ユーハヴ・コントロール」


 僕が言うと彼女は笑った。それは涼やかな風のように気持ちのいい笑いで、僕は束の間、狭苦しい船倉の空気を忘れる。それは決意にも似た宣言で、彼女は力強い瞳で言うのだ。


「アイハヴ・コントロール。任せておいて。飛行中はシラユキに守ってもらった。じゃあここからは、あたしがシラユキを守る番だよ。……それにしても」

「うん?」

「やっぱりシラユキ、何かに取り憑かれてるんじゃない? 三回目だよ」

「僕もそろそろそんな気がしてきたよ」

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