ダイアンの決意(後)
◆
ダイアンは荷物を取りに
建物内の人たちはほぼ避難を済ませたが、
避難生活の疲労から、トーマス夫妻はかすかに体をゆらしているだけで、その場から動かない。ポールだけは室内をフラフラと歩いていた。
彼らの視界に入らないよう、
部屋を後にしたダイアンは、東棟を出てから
布でくるんだだけの
十数年間、ただの一度もそでを通すことのなかったドレスと、銀製のティアラ。巫女と呼ばれていた当時、
あと一つは、普段はルーを呼び寄せるのに用いていた、
ダイアンは意を決してドレスへ着替えた。自身が巫女であると証明するには、これしか思い当たらなかった。
元々着ていたワンピースをしまう時、ウォルターからプレゼントされたブローチが目にとまった。しばらく目を投じた後、それをドレスへ付けかえた。
ちょうど彼女が着替え終えた時、
「お
「だいたいわかるでしょ」
「まさか、正体をバラすんじゃないだろうな?」
「そのまさかよ」
「どういう風の吹き回しだ? 十数年間、あのせま苦しい部屋でガマンしてきた苦労が、全部水の
「わかってる。でも、ウォルターが戦っているのよ。ウォルターだけじゃない。みんな戦っているの。私だけ、いつまでも隠れ続けているわけにいかないじゃない」
ルーがわざとらしくため息をついた。
「いつから、そんな
それがダイアンにとって唯一の心配の種だ。
「あの
ルーの言う『クサい』がどういった意味か、ダイアンは理解している。
ウォルターが身に宿す存在がどういったもので、それが自身の追い求めていた敵であることもわかっていた。ただし、
「でも、
「わかったわかった。じゃあ、俺が一緒に行ってやるから、勝手にどこかへ行かないようにな」
◆
ダイアンは
「ご苦労様」
ダイアンはサラッと声をかけて、議場へ足をふみ入れた。あまりに堂々とした振る舞いに、見張りの二人は何の疑問もいだかず、背筋をのばして
「あ、あの……」
しばしの間を置いて、おかしさに気づいた見張りの二人が、後を追って議場へ入る。中にいた議員たちもダイアンの存在に気づいた。
議員たちはいつでも逃げられるようテーブルを離れていたが、大会堂でいっせいにゾンビ化が始まったとの
ジェネラルは意識を失っていたが息はあり、控えの間に運び込まれた。
「……何だね、君は?」
「状況を説明して」
議員たちは
「巫女……」
ほどなく、議員の一人が
ダイアンは白いドレスを身にまとい、
「もしかして、巫女でしょうか……?」
「そうよ」
議員たちがいっせいにざわついた。
「今までどこにいらっしゃったのですか」
「ごめんなさい、深い事情があったの。それは後で説明するわ」
「巫女が来てくださった」
「これでひと安心だ」
議員たちが口々に
「敵の手により、『転覆の魔法』が解除されてしまったようです。我々がふがいないばかりに、このような事態に……」
ダイアンは
また、『転覆』前に、この国に対して
「誰の
ダイアンは答えようとした議員に顔を向け、
「
「は、はい……。よくご存じで」
「あとは
「パトリックのことね」
「それもご存じでしたか」
ダイアンが巫女であることを、今や誰一人として疑っていない。何もかも
「二人はまだ上にいるのね」
「はい。先ほど〈
辺境伯は信頼を置いていた部下だが、その身に何かがあったのは想像にかたくない。力を失った現状においては危険な敵だ。
ダイアンは
「お前たち、お
「は、はい!」
議場の奥へ向かったダイアンを、見張りの二人が追いかける。扉の近くで待機していたルーも、議員たちの頭上を飛び越え、ダイアンの後を追った。
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