感情的な麗奈…白き妖精の舞
「教えてください。先生」
私は先生の唇数センチ手前で最後の問いかけに自らピリオドをうった。
もうこれ以上は我慢出来なかった。
昌幸の唇を奪った麗奈はそのままの勢いで彼を押し倒した。絡みつく彼女の舌はさきほど飲んでいたカルピスの甘酸っぱい液を昌幸の舌に広げる。麗奈の想いが詰まった液が昌幸の舌もしくは麗奈の舌によって喉の奥へ運ばれていく。それは麗奈も同じだろうが彼女が上になっている分下になっている昌幸の方が受け入れる量は多かった。
麗奈が上になった状態で昌幸は数分もしくはそれ以上に彼女の唇を受け入れ続けた。麗奈の気持ちが落ち着くまで待った。
昌幸にまたがったままの麗奈はようやく顔をあげる。そしてコートを羽織ったまま、自分の制服、ベスト、ブラウスの前ボタンを手早く外していく。
雲の隙間から現われた月が彼女を照らし始める。後ろからは見えないだろうが昌幸の見る前からは麗奈の白い肌と包容力がありそうな豊かな胸、そしてそれを申し訳なさそうに隠す紺色のブラジャーがはっきりと見える。そして彼女はまた昌幸に顔を近づけた。
「昌幸先生、私を抱いて」
私はそう彼に囁き身をあずけた。
数秒たってから彼から応えが帰ってくる。
「すまない麗奈、やっぱり今は君を抱くことは出来ない」
…なんで?魅力ないの私?…そんな事ないわ私は他の子より美人なのだから
「私じゃダメなんですか。魅力ないですか?」
そう数秒前までかなり長いキスを先生と私はした。
「ダメとか魅力がないとかではないよ。どっちかというと俺にはもったいなさすぎる」
最初ほど抵抗した先生だったけど今は優しく私を包み込んでくれている。
「今さら怖気ついたんですか。さっきあれだけ熱いキスしたのに。」
私はあれで余計に火がついたと言うのに…。
逃がしてあげません。
「昌幸先生。ブラジャーのホックを外してもらえませんか。前じゃなく後ろにあるタイプなので」
彼から一旦断わられた私はちょっとムッとする。わざと不機嫌なアピールをしてブラジャーを外すように命令した。後ろホックであろうが普通は一人で余裕で外せる。わざと先生に外させやる気を起こさせる事にした。
あまり麗奈を傷つけたくはない俺はどうすればいいか考えていた。彼女に押されキスを流されるまま受け入れてしまった俺も悪いが、今の麗奈はただ寂しくて誰かに甘えたいだけなはず俺の事を愛しているのか、好きなのかも分かってない状況の麗奈を抱くことは出来ない。
…それに俺には彩花がいる。……せっかく彩花と再会出来たのだから……。
昌幸先生が私の背中に手を回しブラジャーのホックを外し始めた。覚悟を決めてくれたのね昌幸先生、嬉しい。ホックはすぐに外された。
……昌幸先生、でもホックを外すの手慣れてませんか?
ブラジャーのバンドが当たっていたはずの背中には外気にさらされた大きな手が触れられる。私は思わず「冷た」と声をあげる。昌幸先生は「ごめん、冷たかったか」と謝ってくる。私が「大丈夫よ」と言うと彼は両手で私をぎゅーと強く抱きしめてきた。
私は嬉しくてもう一度キスをしようと昌幸先生に顔を近づけた……。
「麗奈、聞いて欲しい」
お互いの唇が触れ合うかどうかの微妙な位置で昌幸先生が私に声をかける。
「嫌です」
即答。
「…頼むから俺の話しを聞いてくれ。もし納得出来なかったら麗奈の家で嫌というほど抱いてやるから」
悩む私。
「…分かりました。ただし、このままずっと抱きしめた状態でお願いします。…あ、でもちょっと待ってください」
私は上半身を起こしボタンが開いたままの服を脱ぎ先生が素早く外したブラジャーを取った。今のままではブラジャーが乳房に当たり痛かったのだ。先生には完全に私の生まれたままの姿を上半身だけ見せてしまっているが関係無い。どうせ後から全てを見てもらうのだから…。
「さむ〜」
私は思わず声をあげる。当たり前だけどね。一月の中旬にいくら暖冬だと言っても夜の10時過ぎに上半身裸で外にいる人はいないだろ。いくら私がロシア人ハーフでも冬は寒い。
「風邪引くぞ」
先生に呼ばれて制服とコートだけ羽織り昌幸の胸に潜り込んだ。やっぱりこの方が暖かい、先生の手が私をぎゅーと包み、抑えるものがなくなった私の乳房が先生の胸に直接あたる。二人がコートを羽織って密着しているせいか想像以上に暖かった。
「それで昌幸、話しって何?」
先生を呼び捨てにして名前で呼ぶ。私はもう覚悟を決めていた。
「麗奈ありがとう。おとなしく聞いてくれて」
先生は片方の手で私を抱きしめ、もう一方の手で頭を撫でてくれた。なんか凄く幸せ、猫ちゃんにでもなった気分…。こたつで丸くなっている猫ちゃんもこんな気分なんだろうなきっと。……なんか凄く眠くなってきた、いや寝ちゃダメよ麗奈…少しは昌幸の話を聞いてあげないと…。
「俺は昔、この学園のこの場所で彩花と言う女の子に告白されたんだ。」
昌幸に抱きしめられ暖かさと安心感からの為、うとうとしている私。
………彩花?
今、昌幸。彩花って言ったよね。眠たくてボーッとしている頭の中が徐々に覚める。
「その女の子彩花はまだ中学生らしく、まあ見た目は小学生って感じに見えたけど」
「それで初めて一人で愛知の自宅から岐阜の病院まで来たらしく乗るバスが分からなく俺に聞いてきたんだ」
麗奈は黙って聞いていた。この話どこかで聞いた事がある。…そうか彩花の家に泊まって五人で恋ばなの話をしてた時だ。
「無事にバスに乗れたのだけど、はしゃぎ過ぎたのかその子が急に気分が悪くなって慌てて降りた場所が桜川女子学園だった。」
麗奈は一つ聞きたい事があった。昌幸に軽くキスすると甘えた声で聞いてみた。
「ねェ、まさゆき。その彩花って子はその頃から、頑固で自分の意見を曲げず、とりあえず考えるよりまず行動するって感じだったの?」
「うーんどうだろ。俺が彩花と一緒にいたのは数時間程度だったから。でも、そんな感じはしたかな。」
昌幸はまた頭を軽く撫でてくれた。私はありがとうのキスを口にする。
もはや完全に恋人のようになっていた。こんな所を誰かに見られたら確実に二人ともこの学園にはいられないかな…
「三年後、今年の7月事件が起きた。別の高校で教師をしていた俺はテレビのニュースを見てその子が無事に桜川学園に入学できた事と同時にいなくなった事を知った」
……今の昌幸の話を聞いて何か引っかかるのよね……?何だろう?
麗奈は考える。
…あ、そうか。分かったわ。
まさゆきどうするかしらねこれ聞いて…
麗奈が相手の弱みを握り心の中で微笑んだ。
「はーい先生。一つ矛盾に気がついたのですが、言ってもいいですか?」
「どうぞ麗奈君」
もとが、教師と生徒なのでこのシチュエーションは問題ない。もっとも二人の今の状況を見られなければの話しになるが。
「昌幸って三年前ここに来てたんだよね?」
「そうだよ。それがどうした?」
「三年前って昌幸、確かアメリカに行ってませんでしたか?」
「あ、……大人の事情てやつだそれ以上ヤボなことは聞くな」
「まさゆきー、黙っていてほしいですか?」
「………」
その後、昌幸の口は麗奈の容赦のない舌の攻撃にしばらく黙らされる。
そのうえ、麗奈の「私だけ裸じゃ不公平」と咎められ上半身の服を脱がされた。
二人の体が直接触れ合い体のぬくもりが伝わってくる。彼女がわざとらしく体を擦り合わせ舌を絡ませてくる。外の世界は冬なのだがコートで覆われている中は、体温の熱気で夏を迎えている。
10分後解放されたその舌は麗奈の液で埋め尽くされていた。
先に話しをしたのは麗奈だった。
「それで昌幸は彩花のことを追ってこの学園に裏口から入ったと?」
「裏口から入ってない。しっかりと表から入っている」
「危険を犯して偽造履歴まで提出して、彩花の為に。桜川学園の審査は相当厳しいのに。彩花の事、昌幸は好きだったんですか?相手は中学生でしかも一回しか会ったことがなかったのに」
「好きとか愛してるとかじゃなくて放っておけない子って感じだったな。事件のニュースを見るまでは彩花の事なんてほとんど忘れてたよ、こっちに戻ってくる前は俺も彼女がいたからね」
…ヘェ〜先生、彼女いたんだ。意外。
…でもこういう人に限って女の扱いに慣れてそう。
…外見は普通でイケメンでもないが、どうしてかなそんな感じがする。
…ただただ、優しいだけなのに。
「ただねー」
昌幸の口調が少しだけ暗くなる。
「教師になってすぐに、俺は理想と現実のギャップに悩まされた」
「理想と現実のギャップですか?」
麗奈は聞き返す。
「厳しさと優しさの両立をしたかったんだよ。昔の恩師のように」
昌幸の胸の上で猫のようになっていた麗奈はひょこっと顔出し昌幸の顔を覗く。
…昌幸、凄く悲しそうな顔してる。
「でも俺は、」
「生徒に厳しく出来なかったんでしょー、昌幸。うーん昌幸には無理だと思うな、だって昌幸優しすぎるから。」
泣きそうな顔してる昌幸を、今度は私が頭を撫で撫でしてあげた。
「もともと就職組が大半の高校でね、この学園みたいに授業をまともに聞いてる子なんていなかった。しかも、俺は古典担当教師だったから余計酷かった」
そうよねー、古典なんて就職する子には特に必要のない授業、進学組でもあまり好かれていない。よほど興味を持っている子なら別だけど。
でも、結構面白くていい物語も多いんだけどね、伊勢物語や竹取物語に平家、源氏、大和物語など私は好きだけなんだけどなぁ。
「でも、まさゆきー、古典の授業を受ける生徒なんて何処の高校でも同じだと思うわ。私達のクラスだって私がいるから成績がいいだけであって、普通はここまで良くないわよ。」
「そうだなぁ、麗奈が模範生徒だからな古典は。」
少し苦笑いをして私を見る昌幸。
「だけど、……模範生徒がこれだから、みんな可哀想に」
昌幸はまた麗奈に口を閉ざされる。
「今なんか、いったかなー?まさゆき。自分の事を棚に上げて?」
古典教師と模範生徒の淫らな密会。スポーツ新聞にだせそうだな。
昌幸がそんな事考えてると麗奈が話しかける。
「その時に、昌幸は、辞めるか悩んで彩花を思いだしたのかな?」
「そうだな。彼女の諦めず、前を向く姿を思いだした。そのおかげで今も教師を続けられてる」
やっぱり彩花は凄い。いなくなってもこうやって人の心に残ってる。
私には出来そうにない。
「それで、前の学校を辞めて彩花の通っていたこの学園に教師としてやってきたんですか」
彩花が羨ましい。いなくなっても尚、ここまで想ってくれる人がいて。
なんでだろう?今は絶対に私の方が優位に立っているはずなのに……。彩花に追いつけないほどの距離がある感じがする……。
これは多分嫉妬かな……。
「バカじゃないの!……そんなさ、たかが数時間だけしかあった事のない……女の子の為に」
三日前から色々とあった私の感情が一気に爆発した。
私の目から涙が流れる。
「麗奈」
「まさゆきは、ロリコンなんですか。私みたいに大人っぽい女の子は嫌いなんですか」
…違う、何を言ってるの私、そんな事を私は言いたいんじゃない。
彩花の事をずっと追ってきた彼、それを行動にうつせた彼、もう絶対に会える事がないのにもがく彼。
なのに私は重雄がいなくなっても、何もしていない。悲しむことも…。
悔しい、悔しすぎる。いつの間にか私は自分一人では何も出来ない子になっていた。
彩花が亡くなった時も、私は重雄に逃げて…今度もまた昌幸に逃げようとしている。
私は誰かに着飾ってもらわなければ、綺麗に輝くことすら出来ない。たとえそれが自分の意思かどうか分からなくても。
自分の美しい顔と綺麗な体に触れてもらい相手を魅了させる私。
次の誰かに拾ってもらう為に、自分の感情は押し殺して、用意された舞台に愛想よく座ってご主人様を待っている私。
まるで、ショーケースに飾られた人形のように買い手を待っているだけな私。
私は昌幸の胸に顔を埋め泣いていた。
昌幸が話しかける。
「麗奈…。さっき俺に言った事覚えてるか?」
私はまだうずくまったまま泣いている。
「私は感情が分からない。そんな事を言ったよね麗奈は?」
「でも、俺が見ている限り麗奈は怒ったり、泣いたり、笑ったりとしっかり出来てるよ。分からないのじゃなくて、周りの人にはそれを見せたくなかったんだよね自分をよく見せる為に、常に強い自分、冷静な自分、完璧な自分を演じているだけだよね。周りの人に虐められない為に。自分の気持ちを我慢してずっと育ってきた。高校になってもそのスタイルを貫くつもりだったのに彩花と会い、完璧を演じ続けてきた自分に綻びが出てきた。彼女の生き方が凄く羨ましいし。全く違う生き方に興味があった。話して見ると意外に面白く一緒にいると楽しかった。意見の違いがある事もあったが君は彩花だけは信頼のできる友達として自分の本質をさらけ出した。」
昌幸は話すぎて疲れたのか休憩を入れる、私はしばらく泣いていたが今は昌幸の顔をじっと眺めていた。時刻は23時過ぎ、私が彼の体に身を埋めてから一時間以上経過している。疲れてないかなと心配したが、そこまでつらそうにも見えない。まあ、私は体重が軽いから昌幸もそこまで気にしてないのだろう。
そう思って彼を見ていると、彼の顔に一人、二人と白い妖精達が舞い降り始めた。
…雪だ。
「…だけど、彩花が急にいなくなって、私は心の支えを失った。そして、今の私がいる。………昌幸、全部分かってたんですね」
「教師だからね」
教師だから分かったとは違うだろうな、教師でも分からない人もいるはずだ。多分…昌幸はもとから女性の考えを読む事が上手いのかもしれない。重雄すらこんな事は言わなかった。さっき私が女の扱いに慣れてると思ったのはそのせいかも…
「昌幸、私決めました。これからは私も、素直に自分をだしていきたいと思います」
私は密かに自分の思っていた事を先生に伝える事にした。
「笑わずに聞いてくださいね」
「いいよ」
先生はじっと私の顔をじっと見つめる。…恥ずかしい。
「私……小さい頃からの夢があって…女優になりたいんです」
「テレビや映画で見る女優に凄く憧れがあってずっと想い続けてました。誰かに縛られる訳でもなく自由に自分の姿を映し他人を演じられる彼女達、それが私にはとても眩しく羨ましく感じてました……。やっぱり可笑しいですか昌幸?」
黙って聞いている先生に私は不安げに聞いてみた。
「別に可笑しくもないし、麗奈ならなれると思うぞ。ただあっちの世界もかなり厳しいよ。大丈夫か?」
「そこは今までの経験と忍耐がありますから大丈夫だと思います。ただ昌幸には私の精神的な支えになってほしくて、別に彼氏になってとかそういう訳でなく。…そのなんて言えばいいかよく分からないけど…駄目ですか?」
「いいよ俺でいいなら。教師と言う立場からではなく…?なんて言えばいいか分からないな確かに。困った事があったら悩みも聞いてあげるし、間違ってたら注意もしてあげるよ」
「ありがとう昌幸」
「…でな、麗奈そろそろ」
「そうですね。…昌幸もう1回だけ聞くね、私を抱きませんか?私が女優になって有名になった時に後悔しても知りませんよ」
自分の夢を昌幸に教えた私はもう一つ確信した事を彼に伝える。
「それと昌幸、私はあなたが大好きです。その場に流されてとかいう訳でなくあなたの優しさに触れて心から好きになりました。昌幸が彩花の事を想っていたとしても私はあなたへの愛情を変えません。
…それで、私はかなりしつこいので注意してくださいね明日から」
突然の私の告白に黙っている昌幸。
「……そう言われても今は抱きません。だいたい俺が担任になって麗奈と出会ってから一週間もたってないだろうに」
「……何んでよケチ。火がついた女の子に、出会った時間なんて関係ないですよーだ」
「はい、はい。分かったから服を着なさい」
「はーい。…でもその前に、これからもお願いしますね」
私は先生に軽めのキスをする。
別にこれが最後の別れでもない。いつかは私にも先生を振り向かせるチャンスがあるはずだからそれまでは待ってあげよう。
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