運命
ーー暗い、真っ暗だ、ここはどこ?
ーー誰か、誰か、いないの…
耳を澄ませてみると、僅かばかりの水滴の音が聞こえる。
ーーどこなんだろう、ここは、
歩いても、歩いても。ずっと先まで暗闇しかない。不安になり始めた頃、誰かが、私を呼ぶ声が聞こえた。
「彩花、彩花…どうしてこんな事に」
ーー風香だ、風香が探しに来てくれたんだ。風香、私はここよ。ここにいるよ。
彩花はめいいっぱい叫んだ、…それでも、風香は気づかない。
ーーなんで、聞こえないの風香、風香。
叫び続けた彩花は、意識を失った。
次に目を覚ますと、風香の声は聞こえなくなっていた。
でも、今度はっきりと回りを確認する事が出来た。ここは、お風呂場だ。お風呂の中では私が入浴中だ、赤く透きとおった水と白い薔薇に囲まれて………。
ーーえ、私?私がどうして目の前にいるの…
ーー訳がわからない!
半ば、頭が混乱しそうになっていると、お風呂場のドアが開き、二人のおじさんが乱入してきた。
ーーきゃぁ、変態早く警察に連絡しないと!
おじさん二人は彩花の目の前にくると、手を合わせ、目を瞑りお辞儀をして彩花の近くに近づいてきた。
ーーえ、私この人達に何されるの、逃げて、早く、絶対嫌だーー
ーーちょっと、なに私の裸見てニヤついてるのよ。そこのおっさん!
私は叫んだが、まったく気付く様子がない。
しばらくするとたくさんの人が私の部屋に入ってきた。カメラで写真を撮っている人、タンポポの綿の様なもので壁や廊下を叩いてる人達。
ーーなんか、こんな光景見た事あるな私……
ーーそっかこれ刑事ドラマで見た事あるんだった。
最初に入ってきたおじさん二人が、彩花の机の中身やスマホを触っている。
ーーちょっと、私の物を勝手に見ないでー
と、もう一度叫んでみたが彩花の方には誰も振り向こうともしない。
しばらくすると、彩花は風呂場からだされる。体には無数の刺し傷があった。そして、ブルーシートにくるまれ玄関へ運ばれていく。
ーーそっか、私やっぱり死んでるのか。死んだと言うよりか殺されたんだよね私、たぶん……。
ーー誰にだろう、、
ーー今日、何があったのかな、たぶんついさっきの事なのに、記憶が全然ない、、
ーーわからない、それに、私が死んだというか殺されたという事もさっき理解した。
体に無数の刺し傷があったし、今いるこの人達は警察だろう…
ーーじゃあ、何があったの私に…
玄関から外にだされ運ばれていく遺体に、ついて行こうとしたときだった。
玄関のドアから外に出てすぐの場所で彩花は進めなくなった。大きな見えない壁に彩花は
吹き飛ばされ。どうしても、前に進む事ができなかった。そして、彩花の遺体は警察の人達によって車に乗せられ運ばれていった。
そして部屋には彩花一人だけが残された。
ーーこれが、私の運命だったのだったのだろう。認めたくはないけど……
目から涙が溢れ、何もない廊下だけが涙で濡れていた。
1か月ほどたった頃だろうか、不動産屋さんに連れられ一人の太った男性がこの部屋を紹介されていた。
ーー早いなぁ、もう次の借りる人の紹介してるのかぁ、私が殺されたばかりなのにこの部屋で。
ーーどうせ事故物件とかいって安く部屋を借りたんだろあなぁ、
ーーよし、追い出そう。ちょうど暇だったから、いい時間つぶしになるなぁ。
ーーだいたい顔がキモイし。オタクぽっい、タイプじゃない。
引越してきた当日の夜、私はシャワーの蛇口をひねったり、イタズラ電話をかけてみたり、物を投げてみたりした。
そのオタクは翌日には、引越していった。
また、しばらくして今度は、カップルなのか夫婦なのかわからないペアがやってきた。
当然のように、脅かして追い出してやった。
私の目の前でいちゃいちゃするな!ムカつく!
次は…坊主だった。とっても胡散臭い。
坊主はお経を読み始めた。すっごく耳触り。
自分の耳を両手でふさいで。耳触りな呪文が終わるまでまった。こんなんで私は消える事はないがすっごく鬱陶しかった。私は、派手な音を立てて風呂場の鏡を割ってやった。
坊主は慌てて帰っていった。
窓の外から聞こえてくる、蝉の鳴き声も聞こえなくなり、木々の葉っぱが枯れ始めた頃、
私はかなり落ち込んでいた。部屋の外に出られず、移動したくても出来ない。窓の外からは、私と同じ歳の子が友達と楽しそうに話しながら登校している。
ーー私が死んだのって、確か夏の始めだった、もう半年ぐらい経つのかな
ーー風香、元気かなぁ
ーー学校のみんなどうしてるかな
ーーどうして、私は殺されなければならなかったの
ーーどうして……
彩花の顔に涙が浮かぶ。だが彩花はその涙を手で拭いとった。
ーー私、こんなに泣き虫だった?
ーー違うわ、彩花は明るくて元気な女の子だったはず
ーーそうよ、こんなことでグズグズしても仕方ないじゃない
ーー私は、私を殺した犯人を見つけたい。
ーー見つけてどうするの?呪い殺すの?
ーーいいえ、違うわ、理由が知りたい。
ーー私が死ななければならなかった理由が知りたい。
彩花が一人で考えていたとき、ふいに玄関のドアが開いた。
ーー久々に、新しいお客さんかな…
玄関の方に耳を澄ませると、とても懐かしくて暖かい声が遠くから聞こえた。
彩花はその人物を見つめた。動揺していた自分を少し落ち着かせ深呼吸をした。
そして、……死んでから今までする事がなく、すっかり忘れていた小悪魔笑顔でその相手に微笑み、呟いた。
ーー運命ね
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