第11話 無礼にも程がありますから!

教会に連行したとの報告を受けて急いでビデオカメラをセットしてコードは近くのモニターに繋げた。今モニターにはあちらの様子がライブで写し出されている。組立式の映像描写機器を送るときに、一緒に小型のカメラ虫をくっ付けておいた。


見た目は蜂だが、眼のところがカメラになっていて、リアルタイムでの映像を送ってくれる。


難点はやはり虫なので、食べられてりしたら終わりだし、長くても1週間くらいしか機能しない。映像を送るにもエネルギーがいるから寿命が短い。そして受信しているのが小型端末の画面だからか映像が荒いうえにぶれる。


これは前々から考えていた異世界専属カメラマンでも派遣しようかしら。



「神様、セットし終えたようです」


「お、そろそろか」



せっかく初勇者との対面なので、少しお洒落な服を着て、髪の毛もセットして画面が付くのを待つ。

神様らしい服も考えたのだが、あれは降臨する時に使うスーツみたいなものだし、せっかくの後輩(神様が初代勇者)だからある程度近い距離で協力プレーをしたい。


だから神官をあらかじめ退場させておいた。

神職においてはイメージは大事だから。


遣いの人?元々役職を与える時に私の大まかな容姿を教えておいた。見せるのは初めてだろうけど、大丈夫だろう。



画面がチリチリと音を立てながらあちらの映像を写し始めた。



「ねぇ、スー!これもう映った? よし、こほん。始めまして、勇者候補に選ばれた人と、その関係者の人。私は神です」



何事も初めが肝心。しっかり挨拶をして良好な関係を作る。



『………』

『………』


「?」



しかし白髪混じりの日に焼けた男性と、鋼色の髪の少年はこちらを見て黙(だんま)り。



「ちょっと!神が挨拶しているんだからなんか返しなさいよ!!」


『はぁ、こんちわ』



なにこいつ神様の前でなんでこんなつまんなそうな顔してるの!?神様よ!?私!神様!!


はっ、いけない。私の方が年上なんだから、神様なんだから抑えないと。



「あなたは今回の勇者候補として選ばれました。とても名誉なことです。なんせこの世界の人間達の中で最も勇者に向いていると判断されたのですからどうどうと胸を張りなさい」



なんせ私の後任だからね!自慢できるわ!



『いや、俺興味ないんで降りていいですか?』


「ダメに決まってんでしょ、いきなり何言い出してんのあんた」



藪から棒過ぎて素が飛び出たわ。



『俺ほんっと興味ないんで。てか勇者信仰者でも、神言書教(ゴディアス)でもないんで』



ウンウンと隣の親父が頷いてる。おいこらテメェ、息子にどういう教育してんだこら。

後ろにいる遣いが視線で二人を殺しそうな勢いで見てるけど思わずゴーサイン出したいけど我慢。


スーが静かな笑みを浮かべている。

畜生。


なるべく穏便に、仲良く世界の平和を守っていきたかったけど…。ちょっと無理そうなので仕方ない。卑怯だけど、切り札を使うわ!



「そう、じゃあ死ぬしかないわね!」



私は輝かしい笑顔でそう言った。

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神様が勇者を使って魔王を討伐するそうです 古嶺こいし @furumine

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