雲の夢
杢畄
第1話
いつからだっただろう。こんなに雲が美しいと思うようになったのは。
いつ、からだろう。僕の物忘れが始まったのは。
い、つ、から、だろう。こんな夢を見るようになったのは。
「雲の夢」
ミーンミンミン…ミーンミンミン…
あーーーーーーーー暑い。今日も今日とて暑い。確か最高気温は37とか言ってたな……なんなんだ?この人を殺さんとばかりに照りつけてくる日差しは。限度ってものを知らないのか!!なんて、早朝に道の真ん中僕は叫んだ…なんてわけもなく1人いつもの通学路を汗を流しながら歩いていた。
おしゃれな小説や、ラノベならきっとここで「あ!僕の名前は⚪︎▶︎◇×!」みたいな自己紹介を挟むんだろうな…なんて。こんな僕には到底無理な話だが。
小さい頃から、俗に言ういじめられっ子体質の僕は、生まれてこの方16年、友達と胸を張って呼べる人がいない。上辺だけで、僕を見て可哀想と寄ってくる人なんていくらでもいた。でも所詮それは上辺だけでしかなく、それ以上でも以下でもないんだと言うことを彼らが離れていくたびに実感し、心に少しづつ痼を残していった。
ワキャワキャザワザワ
ん?なんだろう?交差点がとても騒がしい。事故か?こんな朝から付いてないな………。……え?あれ?なんだ?この不自然に大きくなってくる影。
歩く僕と比例して徐々に大きくなる影に良からぬ事を思い浮かべ、僕は咄嗟に後ろを振り向いた。視界を大きな看板と、晴天の空が覆った。
「危ないッ!!!!!!」
あ、雲だ。なんて、関係のない事を考えた僕の上に落ちてきた看板に抗う術などなく、僕はそこで意識を手放した。
なんだろう。
ふわふわする…白くて綺麗でふわふわする。
あ、これは雲だ。綺麗だ…え?どうして?どうして消えちゃうの?
ねえッ!!待ってよ!!!!行かないで!!!!ひとりにしないで!!!!
「やだよッッッ!!!!!!!」
息を荒げながら僕は顔を上げた。まわりには母と、祖父母が心配を滲みに滲ませた顔でこちらを見ており、僕が看板の下敷きになった事、その後病院に運ばれた事、そして二週間目覚めなかった事。実感が微塵も湧かなかった。いや、湧かせなかった。何故なら痛さがなかったからだ。おかしい。いくら二週間目覚めなかったとしても多少たりとの痛さは残るはずだ。何かがおかしい。
だが、それ以上に気になることが僕の中を過ぎった。僕の唯一の友達。ツナグだ。
え?友達はいないんじゃって?彼は人じゃない。俗に言う人ではなく、ヒトならざるモノだ。
以下、ヒトと呼ぶ。
彼には実態がない。だが、彼はふわふわととても優しいヒトなのだ。そうまるで雲のように。
でもおかしい、いつもなら彼は僕のそばにいるはず、いや?まてよ?あの日、彼はどこにいた。いなかったんじゃないか?
僕の全身に焦燥感が駆け巡った。彼を。彼を探さなくては、と。
雲の夢 杢畄 @moku004
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