第26話

 R子のことを捕縛する、2つの黒い影。

 それは、警察の制服を纏った光たち――

 『事案発生』! 『事案発生』! 『事案発生』! 警察無線で叫びながら、R子のことを押し返した。


「な……何ですって!?」

「ロリ巨乳はその保護に加え、手札から属性カードを1枚捨て札にすることで警察を召還し、スキルを一つ無効にすることが出来る!」

「つ、強すぎるわよそんなの! インチキじゃない!」

「そういう効果だ! ロリ巨乳に敵う者はいない! ワッハッハッハッハ!」

「……!」


 想像を超えるロリ巨乳の力。単身でも単身ではなく、圧倒的な能力値とスキルを持つ――攻防一体の城塞。


「私はコスト1・N子の属性カードである『モブ』を出すわ。そして……ターンエンド」


 この時点で共に手札は0。ライフは玉藻前3・SSR子5。ライフに開きこそあるが、ロリ巨乳の圧倒的な戦力が邪魔をする。攻撃も次のターンに、無自覚おっぱい押し付けクラッシャーにて二枚破壊される――『地味』は戦闘力500、『猟奇』は戦闘力700、『武器娘』は戦闘力1200。

 対抗の手段は――殆ど残されてはいない。


「私のターンだ! やれ! ロリ巨乳! 無自覚おっぱい押し付けクラッシャーで、N子とR子を破壊しろ!」

『わーーーい!』


 一対の巨山が二人に迫る。


「SSR姉貴!」

「SSR子!」


 SSR子は目を静かに閉じていた。これが、彼女が何かを決断する時の顔であると、他の者達は知っている。

 そして――


「R子の効果発動! 『血みどろの自己防衛』! 私のライフを2支払うことで、破壊を無効にする!」

「何!?」

「更に! N子の効果も発動! 『スルースキル』! エナジーを1消費することで、戦闘力2000以上の相手からのスキルを一回無効にする!」


 2人が発動した防衛スキルのおかげで、ロリ巨乳はその体を阻まれる。そして、彼女は弾かれ、よろめきながら後退した。


「愚かな。そんな雑魚を、自分の身を削ってまで守るとは……。そんな役にも立たん者達を守って、どうするつもりだ! 手札も無い今、何か打つ手があるとでも!?」

「無いわ、そんなもの。次のドローに全てを賭けるしかない。勝算なんて全然。次のターンにはこの子達はまた攻撃に晒されるのは分かってるわ」

「ならば何故だ! ロリ巨乳で攻撃! 出でよ保護者!」


 ロリ巨乳と保護者のタッグがSSR子に迫る。

 だが――


「守らなくていいわ! 私が受ける!」

「!?」


 二人の攻撃がSSR子に直撃した。

 残りのライフ・1。

 手札0。


「何故だ! 何故そこまでそいつらを――」

「私達の家の構成を教えるわ。まずは家長が兄さま。そして私達4人は、SSRである私が一応長女……そしてSR子が次女。R子とN子は大体同じくらいの三女達、という関係よ」


 粉塵の中で。SSR子――長女は、悠然と仁王立ちをしていた。


「勿論血の繋がりは無いわ。SR子は折檻して来るしR子はサイコだしN子は暴力モンスターだし。ホント散々だわ。でもね。それでも私の大切な妹たちなの。たとえゲームとはいえ、無駄死にさせるような真似は決してしないわ」

「そうか……言われてみれば」

「SSR子、自主的に属性カードを生贄にしたりするようなカードを一回も使っていない!」

「そして貴方はさっき、そのロリ巨乳を一人生かすために、仲間を犠牲にしたわ!

 もはや本物の楊貴妃とはかけ離れた、欲望の幻想から生まれた女を生かすためだけに! アザトースと楊貴妃が混ざったナニカに成り果てたその怪物を、貴女は日々を過ごした仲間と呼べるのかしら!」

「詭弁を! たかがゲームで何を言う!」

「たとえゲームでも……日頃の想いが形となるのよ!」


 ピシイ! SSR子の手が、不思議な光に包まれた。


「アレは!?」

「あの光は何だ!」

「私はこのゲームを通して、私達の魅力が誰にも負けないということを証明するためにここに立っているの! 私達一人でも犠牲にして誰かを生かすなんて本末転倒! 私はこのデッキにたった1枚だけ入っているイベントカード……! 幻想を撃ち滅ぼす純銀の魔弾を引き当てて、必ずやその幻想の怪物を討ってみせる!」

「出来るものか! たった1枚だと!? そんなものを引き当てることが……!」


「私は長女よ」


 右手の輝きにも負けないほどの煌きで、SSR子の眼が光った。


「長女としての私の使命……それは、この場であのカードを引き当てること! その程度出来ずして何が長女! 行くわ!」


 デッキに手を置くと、光の奔流が広場を満たす。エネルギーの波動が、SSR子の髪を靡かせる。


「ドローーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 そして、運命の歯車は――廻る。


「イベントカード発動! 『スーパービューティー』!」

「な、何いいいいいいいいいいいい!?」


 玉藻前が絶叫する。

 観客が一気に沸き立つ。


「バ、馬鹿な! 奇跡を! 奇跡を起こしたというのか!?」

「SSR子!」

「SSR姉貴!」


 発動した、運命のラストドロー。最後のイベントカード。SSR子は涼し気な表情で、その効果を読み上げる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る