忍猫さんの陰陽チュートリアル
@nagomiaqu
一話 ある世界の賢者の召喚陣
人里離れた「忘却の森」の最深部。そこには空間が歪み、星々が昼間でも輝く異次元との接点がありました。老賢者イストワールは、古びた杖 を突き、巨大な魔法陣の前に立っています。
「「陰陽五行説」とは、何ぞや? 召喚されたモノ達は皆、口を揃えて『木火土金水 』と言う。だが、その真理を問えば、子供の落書きのような図 を描くのが関の山だ。四大元素 をあれほど饒舌に語りながら、なぜ根源の理を語れぬのだ……」
どういう訳か、召喚されたモノ達は、地球の日本の者が多い。
平行線の世界を観測してみても、「日本」のワードがよく出てくる。
イストワールにとって、召喚されたモノ達は「歩く矛盾」そのものでした。
四大元素への過剰な適応 彼らはこの世界の地・水・火・風という錬金術的分類を、まるで最初から知っていたかのように饒舌に語ります。「火は燃焼、水は流動……」と、学者が一生をかけるような真理を、召喚されたモノ達が平然と、しかも完璧に説明するのです。
神話の不可解な「穴」 日本とは違う土地の北欧神話の主神や雷神の名を挙げれば、召喚されたモノ達は目を輝かせてその逸話を語ります。しかし、イストワールが彼らの故郷の土着信仰、特に日本独自の神話(八百万の神等)について問うと、途端に言葉を濁すのです。「なんとなく理解はしているが……」という曖昧な答えに、イストワールは鼻を鳴らしました。
「あちらの世界」の真理 に 最も彼を苛立たせたのは、陰陽五行説(木・火・土・金・水)です。召喚されたモノ達は「五行」という言葉を知っていながら、その相互関係や哲学的な深みを全く理解していませんでした。 表面的な図や説明に終わり、深淵に導く手がかりになる知識の説明が全く出来ていない。
イストワールはこの矛盾をこう分析しました。 「彼らの知識は、誰かによって『都合よく加工された情報』に過ぎないのではないか? 彼らは真理を知っているのではなく、ただの流行りや娯楽として断片を拾い集めただけなのだ」
イストワールの世界に存在しない概念であるが、異世界から召喚されたモノ達がこちらの世界に干渉した時に、召喚されたモノ達の概念はこの世界に影響を与える。
例えば、狼の最上位種の魔物…… 召喚者が現れる前は別の名称があったのだが、召喚者がこの世界に現れると「フェンリル」の名称に書き換えられてしまう。
では、召喚者の者に「フェンリル」は土着の信仰や逸話に関係するのか?と疑問を投げ掛けると、「違う土地の信仰と逸話」であると答える。
「土着の信仰で置き換える事が出来ないのか?」という問いには「大神(おおかみ)」と答える始末。
何なのか?
根本的な概念がネジ曲がっているのか?
狼の最上位種を少人数の者が「フェンリル」とし、大多数が「大神」と名付けるなら、納得はいく。が、現状は逆である。
また、四方の方角に分布する最上位種の場合、東の青龍・南の朱雀・西の白虎・北の玄武の概念が召喚された世界の秩序として置き換えられる。
東の青龍・南の朱雀・西の白虎・北の玄武の原則を問うと「陰陽五行説」の法則からと当然の事の様に返答する召喚されたモノ達。
ここで冒頭の疑問に帰る。
イストワールは、「陰陽五行説」の概論を尋ねると、召喚されたモノ達は浅い知識しか持っていない事が判明するが、青龍・朱雀・白虎・玄武等の強い概念がこちらの世界に大きな現象として顕現しているのには、納得出来ない。
召喚されたモノ達は、「お約束」ですと答える。
イストワールにとって、「お約束」の真理が知りたいのだが、それ以上の答えは返ってくる事は無い。召喚されたモノ達たちの「お約束」は「お約束」以上でも以下でもなく、そこに理由は無さそうなのが不思議で堪らない。
そこで召喚されたモノ達に期待するのを諦めてしまう事にする。
ここから、発想の転換をする。
この世界で四元素の精霊を召喚する事が出来る。
勿論、異世界から召喚されたモノ達も四元素の精霊達を当たり前の如く召喚しまくっている。こちらの世界の名称で無く、元居た世界の名称。
地・水・火・風の四大元素に対応する精霊たち、錬金術師パラケルススが提唱した存在。火のサラマンダー、水のウンディーネ、風のシルフ、地のノームと言う具合にである。
そう、こちらの世界に召喚元の概念を呼び出せるのである。名付けは重要な事なのに、この世界の名称を打ち消して、召喚されたモノ達の世界の名称で上書きされても問題が生じない事に気付くのに時間が掛からなかったと言うより、上書きがこの世界にどう影響を及ぼすかと観察していたが、全く問題が無い事が解った。
イストワールは、四大元素の精霊を召喚出来るこの世界の理を通じて、召喚されたモノ達の世界の「陰陽五行説」の概念をこの世界に召喚出来るのでと予測を立て、長年の研究の末、「陰陽五行説」の概念を召喚する魔法陣を完成させたのである。
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