裏切り
「ユウっ!!」
「ユウさん」
「……」
車田くん氷華ちゃん空くんの三人が私達のもとに駆け寄ってくる。
「……やつで、離れていろ」
そう言って、ユウは私をそっと突き放した。
「なんだよユウ! やっぱり生きてやがったか! オレは信じていたけどな! お前は絶対に生きている――」
一瞬、何が起こったのか、分からなかった。
突然空くんに向かって殴りかかったのだ。
それを見た車田くんが瞬時に反応。ユウの拳を受け止めた。
「どういうつもりだ、ユウ!」
「……できれば一番厄介な空を先に倒しておきたかったんだがな。仕方ない、まずはお前からだ車田」
そう言ってユウは車田くんの足を払い、態勢を崩す。その隙を狙って、ユウは車田くんを攻撃しようとした。
「shoot」
だが、そう簡単に事は運ばない。
氷華ちゃんがユウに向かって水鉄砲を発射する。ユウはそれを避けるため、車田くんへの攻撃を中断し、横に飛んだ。
「さ、サンキュー吹雪!」
「どういたしまして。……もう一度聞きます。どういうつもりですかユウさん。何故わたくし達に攻撃を?」
指の銃口をユウに向けたまま、氷華ちゃんがユウを睨む。
「そ、そうか分かったぞ! ユウはそのヘンテコな機械に操られているんだ! そうに違いない!」
車田くんが叫んだ。
彼の言う通り、ユウは操られている可能性がある。でなければユウが皆を攻撃する理由が無い。
「悪いがこの機械はただの通信機だ。そして、攻撃したのは俺の意志だ」
ユウの眼には殺気が満ちていた。
「洗脳にせよ故意にせよ、ユウさん。今のあなたを危険分子として判断し、身柄を拘束させてもらいますわ。vapor」
目には見えないけど、言葉から察するに氷華ちゃんは水蒸気を発生させたようだ。酸素不足でユウを気絶させるつもりだ。
でも。
「残念だが、俺に窒息は効かん」
ユウは瞬時に氷華ちゃんに飛びかかり、彼女の腹部を殴った。
「うぐっ!!」
氷華ちゃんはその場にうずくまる。
「てめえ!!」
氷華ちゃんが蹴られ、怒った車田くんがリングを発動し、炎の右拳でユウに殴りかかる。
ユウはその攻撃を素手で受け止めた。
「どうした? いつもより火力が弱いぞ。それともかつての仲間である俺に情でも湧いたか?」
「くっ……!」
「悪いが今は、敵同士だ」
そう言ってユウは車田くんに頭突きを喰らわせる。
頭突きでひるんだ車田くんの腹部をユウは蹴り、車田くんは後ろに飛ばされた。
その時だった。
ユウの上空から何本もの倒木や岩が落下してきた。ユウはそれに押しつぶされる。
「……」
空くんだ。 常盤空くんが何処からか瓦礫を転送し、それをユウにぶつけたのだ。
瓦礫の中からユウが飛び出てきた。
「やはり。その能力は厄介だな。だが弱点はある。その力はお前の鋭い観察眼が要だ。つまり……」
ユウは地面を蹴り上げ、砂を巻き上げる。
砂埃で視界が遮られる。
砂埃が晴れると、そこには倒れている空くんと、それを踏みつけるユウがいた。
「まずは、一人」
「やめてユウ!」
私は叫ぶ。私の声に反応して、ユウは攻撃するのを停止した。
「どうしてよユウ、どうしてこんな酷いことを……」
何かの間違いだと思った。そう思いたかった。
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