炎から熱へ

「車田くん!!」

「行くぞ!!」 


 私達四人はフィールドに降りる。そして急いで車田くんのもとに駆け寄る。


「大丈夫、車田くん!?」

「はぁはぁ、大丈夫だ。ちょっと疲れただけだ」 


 よほど疲れているらしい。いつもより声が小さかった。 

 ユウが車田くんに肩を貸す。


「どうだ、ユウ。オレがただ声のでかいやつじゃないってことが分かったか?」

「ああ」 


 そのユウの言葉を聞くと、車田くんは「へへ」と笑った。


「それと吹雪、ありがとな。お前のおかげで勝てた」

「? 何のことでしょうか?」

「お前が言ってくれたんだろ。『こっちまで暑くなるどころか、逆に体温を奪われて、冷静になってしまいそう』って。あの言葉を思い出して、思いついたんだ」 


 思いついたって、何を?


「オレの能力は炎を生み出すだけで、自分の意志で消すことはできない。そのせいで凩にも危ない目に遭わせちまったけな。でもな、吹雪の言葉を聞いて思ったんだ。炎を放出できるのなら、逆に吸い込むこともできるんじゃないかってな」

「つまり、マグマの熱エネルギーを吸収したということですか?」

「まあな、おかげでオレはマグマ攻撃を克服、おまけに火炎砲のチャージの時間を短くすることもできたってわけだ」 


 マグマが黒くなったのは熱を吸収、つまり冷やされて固まり火成岩になったからだ。表面に氷が付着していたのも、大気中の水分の熱を吸収して、氷に変えてたからだろう。


「なるほどな、熱を『生み出す』から『操る』に昇華したというわけか。大したやつだよお前は。あの土壇場で進化するとはな」

「へへ、進化か。良いなその言葉、燃えるぜ」 


 車田くんが笑う。とても嬉しそうだった。


「とにかく、これで三勝だ。待ってろ、今皆の言葉を代弁するからさ」

「いや、いい。俺が声を出す。お前は喉とそのボロボロの体を休めていろ」

「ああ、悪いな……」 


 安心したのか、車田くんは気絶した。ユウがその場にゆっくりと彼を寝かせる。


「すぅ……これで三勝、俺達の勝ちだ。約束通り、地球を狙うのはやめてもらうぞ」 


 普段より三倍は大きな声で上の方、湖の岸にいる、残った二人のエンダーに語り掛ける。


「残念ですが、遊びはここまでです。あなた達には消えてもらいます」

「ふん、やはり最初から約束など守る気など無かったか」 


 私達が戦闘態勢に入る。


「我々にも事情があるのでね。汚らしい人類との約束など守る義理はありません」

「でしたらやることは今までと同じですわ。あなた方エンダーを倒す、それだけですわ」

「もうゲームは終わった。一対一というルールも無くなった。こっちは全員で戦わせてもらう」 


 敵は残り二人。車田くんは眠っているけど、私達は四人。人数では圧倒的にこっちが有利だ。


「それは、どうでしょうか?」

「なに?」 


 その時、ドサッと、何かが地面に倒れる音が聞こえた。 私達は音のした方を向く。 


 そこには不思議幼児、常盤空くんが横になって倒れていた。

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