全てを思い出した
目覚めるとそこはどこかの病院の個室だった。後で知ったけど、ディノコーポレーションが運営している病院らしい。
「目が覚めたか、やつで」
私が寝ているベットの傍らにはユウがいた。他にも三人……氷華ちゃん、車田くん、常盤くんがいる。
「ユウ……」
私は少し怒った顔でユウを見つめる。
「その様子だと、思い出したようだな」
「まあね」
私は思い出した。
社長室で聞いた話。ユウから当て身を喰らって気絶したこと。ディノコーポレショーンで記憶を消されたこと。
全てを思い出した。
私は少し鋭い目で、ユウを睨む。よくも気絶させてくれたな、という念を込めて。
「……怒っているのか?」
「別に? 全然怒ってないですけど?」
「怒っているじゃないか」
「怒ってないって言ってるでしょ」
「まあまあ、二人方」
私とユウとの間に氷華ちゃんが割ってはいる。
「やつでさん、あまりユウさんを責めないであげてください。やつでさんのことを思ってしたことなんですから。女性のために殿方が何かをなさる、素敵なことではありませんか」
「……私が記憶を失っている間、氷華ちゃんもエンダーと戦っていたの?」
「ええ、二体ほど殲滅しましたわ」
私がのうのうと生きている間、氷華ちゃんも戦っていたんだ。
「ちなみに空とユウも二体! そして俺は三体倒したぞ!!」
うん、誰も聞いていないよ車田くん。
「それはそうとゴメンな凩! もう少しで俺の炎がお前を燃やしちまうところだった!」
車田くんが物凄い勢いで土下座をする。
「大丈夫だよ、車田くん。氷華ちゃんが助けてくれたから、火傷もしてないし。それにわざとやったわけじゃないんだし」
私は自分の身体を見てみる。うん、まだ頭はちょっと痛いけど、身体に傷は無いみたいだ。
「まったく。これから訓練は人のいない所ですることですわね」
「ホント面目ない!」
車田くんがグリグリと床に頭を擦り付ける。
「氷華ちゃん、助けてくれてありがとう。……氷華ちゃんも現実で能力を使えるようになったんだね」
「ええ。ディノコーポレーションでリミッターを解除してもらいましたの」
氷華ちゃんが言うに、車田くんも空くんも能力者になったらしい。
「……ユウもありがとね。私を助けようとしてくれて」
「俺の責任でもあるからな。やつでがいると気付けなかった俺の失態だ」
私はちょっと意地悪を言ってみる。
「そーかもねー。いつも私を守るって言っておきながら、こんなミスをするなんてねー」
「……面目ない」
ユウがしょんぼりしている。ちょっと楽しい。もっと弄りたくなる。
「失礼します」
私がユウ弄りを楽しんでいると、黒服の男性が入室してきた。私達を社長室に案内してくれた、あの黒服さんだ。
「皆様、社長からのメッセージがございます」
「メッセージ?」
私は聞き返す。
「たった今、ディノコーポレーションに、エンダーからの挑戦状が届きました」
その言葉を聞いた瞬間、その場にいた全員の目つきが変わった。
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