滅ぼされた種

「私達恐竜は平和に暮らしていた。だが、その平穏は一瞬で破壊された。宇宙からやってきたエンダーによって」 


 社長が悔しそうな顔をする。


「あるエンダーは炎で焼き払い、あるエンダーは巨大な爪で切り裂き、またあるエンダーは毒液で私の仲間を腐食させた。まさに地獄だったよ」 


 社長が事細かに、当時の状況を説明する。


「エンダーは恐竜を絶滅させた後、宇宙に帰っていた。辛うじて生き残った私は悲しみと絶望に打ちひしがれた。だが、悲しみに沈んでばかりいられなかった。私は確信していた。エンダーはまた地球に来る。その前にエンダーに対抗する術を生み出さなければならない、とね」 


 社長はそう言いながら、デスクの引き出しを開ける。


「そして私はついに完成された。エンダーと戦う術……装着者を能力者に変えるアイテムを」 


 社長が引き出しから取り出したのは、リングだった。


「それがアビリティリングというわけか……」 


 私達は自分達のアビリティリングを見つめる。


「ちょっといいか!?」 


 車田くんが元気よく挙手してくる。


「さっきから社長さんと、凩と不動って奴は能力者の存在を現実と受け入れているが、どういうこどだ!? アビリティリングの能力ってのは異空間フィールドの中だけじゃないのか!?」 


 そっか、車田くんはリングの秘密を知らないから、そこから説明しないといけないんだ。


「答えは簡単なものだよ、車田くん。アビリティリングによる能力覚醒は異空間フィールド限定ではない。現実でも使用可能なのだよ」 


 社長は端的に答えた。 

 そこにため息交じりに氷華ちゃんが言い放つ。


「だいたい、そこにいるユウさんは、エンダーとの戦いで刀を実体化させていたではありませんか。あなた、見ていなかったのですの?」

「手品か何かだと思ってた!」

「……あなた、バカですわね」

「な、なんだと!?」 


 車田くんが怒り出すのを、私は宥める。


「アビリティリングはリミッターを解除することによって、能力を現実世界でも使えるようになる。凩くんの持つリングは何らかの弾みでリミッターが解除されてしまったのだろう」

「じゃあ、この前逮捕された電撃使いの女性も……」

「うむ。彼女のリングもまた、リミッターが解除されてしまったのだろう」 


 簡単に解除されすぎだよリミッター……。

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