NEX開催

 数ヶ月後の夏休み。ディノコーポレーションの宣言どおり、能力者バトル大会NEXが開催された。 大会の様子はテレビ中継を通じて、全国に放送される。 


 会場にはたくさんの選手が集まった。全員、『何でも願いを叶える』という賞品に魅了されたのだろう。私もその一人だけども。 


 この日のために、私もいろいろと準備をしてきた。 

 絶対に勝ってみせる。私は心に誓う。 


 抽選の結果、私の初陣は一回戦第二試合。これから一回戦第一試合が始まる。 


 私は選手控え室のモニターから試合内容を見る。


「この試合の勝者と戦うことになるからな。きちんと試合の様子を見て置け」 


 出場してもいないユウが何故か控え室にいる。


「どうして、ユウがここにいるのよ」

「騒がしい観客席よりも、ここの方が落ち着いて見れるからな」 


 係りの人に追い出されても知らないからね。


「始まるぞ」 


 モニターを凝視したまま、ユウがそう言う。 

 私は視線をモニターに戻す。


『赤コーナー! 沖縄が生んだ野生児、車田烈!!』 


 レフリーの紹介文を共に、上半身裸の男が試合会場に入場してきた。普段から裸なのか、日焼けで肌がとても黒い。木刀のように鍛えられた筋肉は、彼の強靭さを物語っている。レフリーの言う通り、まさに野生児だ。映画のターザンみたい。


『青コーナー! 北海道の雪姫、吹雪氷華!!』 


 祭田烈の反対側コーナーから、一人の少女が入場してきた。 

 粉雪のように白い肌、雪の結晶のように綺麗な瞳、凛とした佇まい。車田烈くんがターザンなら、吹雪氷華さんは雪女と称するのが正しい。 


 熱い男と冷たい女の戦いだ。 

 二人は形式的に握手を交わし、一旦離れて自分達の定位置に立つ。


『異空間フィールド展開!!』 


 レフリーの言葉により、異空間が展開される。 この瞬間、彼らは能力者となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る