嵐の前の静けさ

 桜子は一人夜道を歩く。

 そして呟く。


「なんか、蚊帳の外って感じだったな」


 桜子は疎外感を感じていた。

 紅史郎と逢原詩織には共通点があった。それも多重人格、両親の死という強烈な共通点が。


 でも自分にはそれがない。

 両親は健在だし、自由に入れ替われるような別人格も持っていない。そのことに桜子は少し、彼らとの溝を感じていた。


 史郎、逢原達はそんなことで自分を除け者にするような人間ではない。そんなことは、桜子も重々承知していた。


 だがそれでも、感じられずにはいられなかった。彼らとの距離を。


「羨ましいな、詩織っちが……あーあ、私も二重人格だったらなー!」


 桜子は叫び、望んだ。

 自分も逢原詩織のような、史郎と同じような多重人格になりたい。桜子は心から願った。

 彼女の元気な声が夜空に広がった。

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