考察
「(す、凄い)」
僕は息を呑んだ。
まるで武術の達人が行う瓦割りみたいだった。
「これで二つ分かった事があるな。一つはメガネを外すと史郎と俺が入れ替わる」
足のつま先でトントンと地面を蹴り、靴のずれを直しながらクロちゃんは言う。その時も、地面が凄く揺れた。
「(もう一つは入れ替わったクロちゃんの身体能力がとても高いことだね……。でもどうしてだろう? 今までだって、寝る時とかお風呂に入る時にはメガネを外していたけど、入れ替わったことなんて一度もなかったのに)」
僕は冷静に考察してみる。クロちゃんに出会ってから十数年、今までメガネを外してもクロちゃんと人格を交代したことは無かったし、そもそも彼が脳内に現れたとき、僕はメガネ自体をかけていなかった。どういうことだろう。
いろいろやっぱり分からない。クロちゃんに意見を聞いてみる。
「(んなこと言われたって、俺に分かるわけねーだろ)」
メガネをかけて、人格チェンジ。
試しに僕は半分になったブロックを更に四等分にしてみようとしたけど、やっぱりダメだった。ブロックに傷一つつかないどころか、逆に僕の足の方がダメージを受けそうだった。
「うーん……あ、もしかして!」
入れ替わった原因を考えていた僕は、一つ閃いた。
「(何か心当たりがあるのか?)」
「最初に入れ替わった時、逢原さんを助けたいって強く思ったんだ」
あの時僕の心は、逢原さんを助けたい、あの男から好きな人を守りたい、そんな思いで一杯になったのだ。
「(それで?)」
「逢原さんへの強い思い、つまり愛の力が奇跡を起こしたんだよ!!」
僕は強く言い放った。
愛の力が、僕の身体に、人格入れ替えという奇跡を起こしたのだ。絶対に、そうに違いない。
納得している僕に対して、クロちゃんは頭の中でため息をつく。
「(はぁ、お前って頭いいのに変なとこでメルヘンというかロマンチストだよな)」
クロちゃんに呆れられるが、そんなの気にしない。僕は自分の愛の力説が絶対だと思っている。というか、他に考え付かない。
「(とりあえず俺達もさっさと帰ろうぜ)」
「そうだね。ところでクロちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど」
「(ん、なんだ?)」
僕はメガネを外し、身体の主導権をクロちゃんに託す。メガネを着脱するたびに嘔吐感が感じるのは不便だなと思った。
「(足がふらふらして動けないんだ。代わりに家まで帰ってよ)」
頭の中で、僕は手を合わせる懇願のポーズをする。
クロちゃんは少しため息する。
「(ったく。その代わり、今日の夕飯は豪勢にしてくれよ)」
足を一歩踏み出し、クロちゃんと僕は帰宅の道を進んだ。
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