筒六ルート7話 雑加減

最近、昼休みになると、なんなら恒例行事じゃないかというほどに俺は中庭へ出向くようになっている。

「…………」

もちろん、目的は仲野だ。

「よ、仲野」

「なんだ、鷲宮先輩ですか」

「もう少しリアクションくれてもいいんじゃねえの?」

「そう毎度毎度、鷲宮先輩のために頭を使っている余裕はありません」

「そうか、すまんな」

「…………」

なにかおかしいぞ。声のトーンが低いし、なんだか接し方が冷たい感じだ。俺への突き放し方が雑というか、気だるい雰囲気を漂わせてる。いつも突き放したような言い方はするんだけど、なんだろうな……。興味を惹かせるような突き放し方じゃない。

「鷲宮先輩」

「どうした?」

「私になにか用でも?」

「用ってことはない」

「なら、いつまでここにいるんですか? 私、昼食中なんですけど?」

「用がないと、仲野に会いに来たらダメなのか?」

「……お好きにどうぞ」

やはりなにかおかしい……。いつもとは明らかに雰囲気が違う。言葉にしても、他を寄せ付けないかのようなトゲのある言い方だ。昨日はパンツの履き忘れを除けば、普段と変わらない仲野だったのに……。

「…………」

今日は一変して、修羅の顔だ。

「なあ、仲野?」

「なんですか?」

「昨日、なにかあったか?」

「なぜです?」

「なんか昨日までと態度が違うからさ」

「……いつもこんな感じです」

「いーや、違うな」

「仮に鷲宮先輩の言う通りだとして、なぜそんなことを言わなくてはいけないんですか?」

「強制はしてないぞ?」

「なら……聞かないでください」

「すまんな」

「…………」

今は1人にしておくほうがいいかもしれない。

「俺、教室に戻るな?」

「報告しなくていいです」

「仲野?」

「……なんですか?」

「強制はしないけどさ……やっぱり俺は普段の仲野でいてほしいんだ」

「…………」

「だから、なにか悩んでることがあるなら、俺はいつでも力になるからな?」

「…………」

「話はそれだけだ。じゃあな」

「…………」


仲野にはああ言ったが、正直俺は仲野のことで頭がいっぱいで、午後の授業に集中できていなかったのは言うまでもない。まあ、普段からそんなに集中してないけど。

「…………」

「鷲宮さん?」

「え、あ、どうした、三原?」

「もう放課後だよ?」

「帰りましょう、鷲宮さん?」

「ああ、そうだな」

「どうしちゃったの? 昨日、昼休みに教室へ戻ってきたときはルンルン気分だったのに、今日はずっと上の空だし」

「鷲宮さん、昼休みはどこへ行ってるんですか?」

「んー? うーん、そのへんだ」

「鷲宮さん……」

「あーもう、ダメだねこりゃ。麻衣ちゃん、先に帰ろ?」

「え……しかし……」

「見ての通り、誠ちゃんはポンコツ状態だから、放っておいても大丈夫だよ」

「本当に大丈夫でしょうか?」

「大丈夫大丈夫。どんなに悩んでても、お腹空いたらちゃんと家に帰ってくるから」

「紗智さんがそう言うのなら、大丈夫なんでしょうけど……」

「いいっていいって。誠ちゃん、あたしたち先に帰ってるから、暗くなる前に帰ってきてね?」

「おー」

「いこいこ」

「さようなら、鷲宮さん」

「…………」

仲野、今頃どうしてるかな……。

「部活か……」

そうだ部活じゃないか。仲野のこと心配だし、様子見に行くか。


俺は早速、校舎裏の覗きスポットへ趣いた。さて、ここから……よっと!

「……ん?」

プールを覗くも――

「どこだ……?」

仲野の姿が見当たらない……。

「いない……?」

プールで泳いでいる連中が上がるまで見ていたけど、仲野の姿はない。もしかしたら、トイレかなにかでいないだけかもしれないし、もう少し見ておこう。

「おかしいな……」

あれから30分ほど、プールを覗いていたけど仲野は一向に現れなかった。どこかに行ってるのかとも思って、1年生の教室やら中庭やら、とにかく仲野がいそうな場所を見てみたけど影すら見当たらない。すれ違いかと思って、最後にプールを覗いたが外れ。

「仲野、もう帰ったのか?」

水泳バカの仲野が部活を休むなんて……もしかして、今日は具合悪かったのかな。可能性はあるけど、昼休みはそんな感じではなかった。

「俺も帰るか……」

仲野はもう学園にいないんだろう。明日また仲野に会って、話を聞くか。あまり、こんなことしてると色々とマズイし。今更だが……。


自室の布団に潜り、考える。

「仲野、なにがあったんだ?」

具合が悪いとか、そういうことじゃないんだろ? もっとなにか大きなものにぶち当たってるのか? 好きな水泳の部活を休むほどのなにかに……。

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