第2話 京坂通り

(もうこんな時間になっちゃった…。)


緋奈子が学校を出る頃には外は薄暗くなりかけていた。


あれから日誌を書き、担任のところへ持って行くまでは順調だった。

けれどその後、同じように勉強していた他のクラスの友人に呼び止められ、分からないところを教えてほしいと頼まれてしまった。


早く帰りたいんだけどなあと思いつつも、人から頼まれると断ることができず、嫌とは言えないのも緋奈子の性分だった。

私で分かるところなら、と言って、友人たちの質問に答えていたのだった。


(この時間だと、京坂通りを通る頃にはもう暗くなっちゃうかなあ。どうしようかな…今日は桜を見て帰りたいと思ったんだけど…。)


緋奈子が家に帰る途中に京坂通り、という通りがある。

そこは沢山の桜の木が植えられている桜並木で、桜の季節になると見事な花を咲かせていた。

灯りに照らされた桜の美しさはまた格別で、京都の街のように華やかで艶やかだということから、京坂通りと名付けられたようだ。


京坂通りを通ると家に帰るには少しだけ遠回りになることもあって、帰りが遅くなったときにはあまり通らない道だった。けれど、緋奈子はなぜだか無性に桜を見て帰りたいと思っていた。


(たまには寄り道しても、いい…よね!)


そう自分に言い聞かせると、京坂通りへと向かった。

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