気がつけば、この世界のすべてがいとおしくなっている

かつて禁断の知識を里から持ち出したという医師に育てられ、その知識を受け継いだ少女ウネン。その医師を追って来たという武骨な剣士オーリと、その相棒で笑顔が胡散臭い(※公式説明です)魔術師モウル。この3人を中心に繰り広げられる、壮大な冒険譚です。

どこからこのお話の魅力を説明したらいいのでしょう。
とにかく、登場人物が全員魅力的です。
どの登場人物も確かな人格を備えていて、その一挙一動や台詞の一言一言に、その人の確かな息づかいを感じることができます。

最初はぎくしゃくしていた主役3人の人間関係が、お互いを知っていく中で段々と良くなっていく過程も、とても良いです。
笑顔が胡散臭い(※公式説明です)魔術師モウルの言動が、後半には随分と変わっているところなど、ぐっと拳を握りしめたくなるほど心が震えます。

そして後半に行われる、伏線回収の見事なこと!
その匙加減もまた絶妙で、「やっぱりそうでしたよね! 気づいてましたよ!」と深く頷く場面もあれば、「まさかこういうことだったとは…!」といい意味で予想を裏切られる場面もあり。あのことは自分としてはこう思うけど実際はどうなのか、これは、あれは、と謎解きに夢中になって、後半はほとんど一気読みでした。

読み終わる頃にはこの世界のなにもかもがいとおしく感じられ、もっともっとこの3人と旅を続けていたい、という気持ちになりました。

多くの方にお勧めしたい、とても素敵な物語です。
ぜひ、このいとおしい世界を楽しんでほしいです!

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