15話 五人のテ○スハウス

 ハクトがコーヒーを淹れ直して居住スペースへ戻ると、早速エルとお三方がお喋りをしていた。

「メッシャさんはバレーボール選手なんですね~!すごいです!」

「イェス!アイラヴバリボーデ~ス!」

「そういう美鈴もアーチェリーの選手だろう?」

「ま、まあそうなんですけどね、まだまだひよっこですよ」

 ベッドの隅でゲームをしている琴里を除き、どうやら打ち解けているようだ。

「お、ハクトも帰ってきたことだし、自己紹介でもするか」

「いいデスネ!自己紹介!やりまショー!ワタシからやりマース!」

 エルの提案にメッシャはノリノリで参加する。

「ワタシはメッシャ=マンペァーデース!カナダ出身デス!まあ、今はなき祖国デスネ」

 メッシャは一瞬遠くを見つめ、感傷に浸る。しかし、すぐさっきまでのテンションを取り戻し、自己紹介を続ける。

「得意なことは勿論バリボー!好きな食べ物はようかんデス!和菓子、スイーツ大好きデース!」

 メッシャはサイドテールにしてある赤みがかった髪の毛を揺らしながら、元気よく喋る。

 因みに、連れてきたお三方のうち、メッシャだけが178cmあるハクトより背が高い。流石、外国人バレーボール選手である。

「じゃあ次は私が」

 逆に、お三方の中で一番小さい美鈴が発言しようと手を挙げる。ちょっと動く度に、ツインテールにしてある艶やかな金色の髪の毛が左右に揺れた。

「私は御七後エイミー・美鈴です。日本とアメリカのハーフですが、英語はめっきりですし、文化は完全に日本に染まっています。えっと、好きな食べ物は抹茶味のお菓子ですかね....ふつつか者ですが、よろしくおねがいします」

 美鈴は丁寧に頭まで下げる。身長は小さいが、中身は大人な子だ。

 美鈴が話し終わり、その場にいる全員の目が琴里に向いた。

「……ん、あたし?才場琴理。まあ見ての通りニートっつーか、そういう感じ。ゲームとパソコンには強いかもねー。イライラしてるときに話しかけられるとキレるかも」

 何から何まで適当な娘である。そうこう喋りながらもソシャゲをいじっている。

 そして、机の短い辺の席――いわゆるお誕生日席に座っているエルが自己紹介を始めた。

「先にも言ったが、私はエルエール=バルルード、軍の研究者をしている。大佐だのなんだのと言ったが、まあお友達感覚で接してくれ」

「エルエールさん?出身はどちらなんですか?」

 ここで美鈴がエルに話を振る。

 ――まずい……!

 いくら仲間になるとはいえ、「戦争相手の星から来た宇宙人です」などと言えば反感を買うに決まっている。

「あ、えっとエルの出身は僕も知らないんだよーあはは……」

 全然誤魔化せていない気がする。

 エルはハクトの失態を受けながらも、「まあ企業秘密というやつだ」と冗談めかして受け流すと、ハクトに目線を振った。

「えっと、僕は臼田ハクトです。純潔の日本人で、去年から徴兵でこの軍に所属しています。ま、みんなより年上だけどタメ口で大丈夫です」

「タメ口で大丈夫とか言いながら自分は敬語じゃん」

 いつの間に会話に混ざっていたのか、琴里がツッコむ。

「ま、まあそういうことで、ね?」

 ハクトは頭を掻きながら苦笑する。

「自己紹介も終わったところで、ここでのルールを教えたいと思う」

 エルが飲み終ったコーヒーのカップを置いてそう切り出した。

「まず、トイレ、風呂、キッチン、そして寝室。これらはすべてハクト、私、そしてあなたがたと共同で使うことになる。お互い気にするようにな」

 エルが話をすると、美鈴のみ「はい」と返事をした。

 エルはさらに続ける。

「外出は原則買い物のみ、日中は訓練などを行う。食事は基本的に私が作るが、作れない状況になったらそれはその時決めよう」

 何やら規律を聞いているとやたら軍らしく聞こえる。

「後は決め事をすればいいだけだな。まず、見ての通りベッドが二つしかない。残りの三人は床に布団を敷いて寝ることになる」

 確かに、そもそもハクトとエルの二人だけの予定だったのだから、五人で寝るとなるとかなり狭い。

「私はお布団で大丈夫です。普段からお布団なので」

 美鈴が小さく手を挙げてベッドを譲る。

「あ、じゃあ、僕も布団で大丈夫だよ」

 ハクトも遠慮をして譲った。

「あのさー」

 そこに琴里が口を挟む。

「このベッド広いんだし、二人ずつ寝ればよくない?」

 確かにそれができるだけの広さがあるベッドなのだが、言ってしまえば赤の他人と同じベッドで寝るのはどうなのか、とハクトなどは思ってしまう。

「私はそれでも大丈夫ですよ」

「私もオーケーデース」

「私もいいだろう」

 しかしあっという間にハクト以外の全員が賛成してしまった。

「で、ハクトはどうなんだ?」

 エルの鋭い目線に射貫かれて、ハクトは冷や汗をかく。

「いや、その、やっぱり女の子と一緒に寝るのはまずいんじゃ……」

「でもそれだとあんただけ一人広々と寝られるわけじゃん?ずるくね?」

 だったら三人が布団を敷いて寝ればいいと思うのだが、そんなことを言っても分かってもらえそうな空気ではない。

「んで、ローテーションして一日ごとに一人で寝る人を変えればいいわけっしょ?」

 琴里の追加した提案に女性陣は頷いて賛成している。

「わかりました。そこまで言うならそうしよう!」

 結局ハクトが折れる結果となり、この議論は終わった。

「次にお風呂の件なんだが……」

 休む暇なくエルが次の話へ移る。

「一人ずつ入ると一人30分としても二時間以上かかってしまう。そこでだな」

 ハクトは嫌な予感しかしない。

「二人ずつ入ればいいんじゃないかと思うんだ」

「ちょっと待ってそれはまじで無理!捕まっちゃう!」

 ハクトは赤面しながら猛反発する。

「もちろん、タオル巻くだの水着着るだのすることになるだろうが」

「だからって兄妹以外の女の子と一緒にお風呂っておかしいでしょう!?」

「私は大丈夫デスよ」

「あたしは別になんでもいーや」

「み、みなさんがそう言うなら私も……」

「なんでみんなオッケーしちゃうの!?しかも美鈴さんに関しては無理しなくていいんだよ!?」

 もう完全にハクトがツッコミ役に転じている。

「ということでベッドと同じくローテーション制ということで」

「まだ賛成してないからっっ!!」

 小さい部屋にハクトの悲痛な声が響いた。

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