落とし穴 2

「・・・・・」


元々、積極的に討伐するタイプではないけれど、もう人を殺すなんて嫌だ!

返事をしなかった。

しかしそんな事、真鍋には関係ない。



「人手が足りないの。あっちに付けば、早見が居るからアイツに聞いてね。

マリアは一足先に向かわせたわ。

でも多分、マリアは長くは持たないから。

涼のメンテナンスもしたいし、貴方はその穴埋めよ」



マリアが持たない?・・・・それは何故。

涼のメンテナンスって何だ?



「・・・・マリアはどうして持たないんですか?あの子は真面目な子です」


4人の中で、マリアは純粋に真鍋と女王に感謝をし、自分の損得に関わらず討伐に参加していた。

そんな子の事に対して、どうしてそんな事が言えるのだろうか?



「あぁそれはね、中身が違うからよ。

で、今からすぐにハヤトには移動してもらうわー・・・・・・」



中身が違う?

さっき言っていた、マリアは改造中という言葉と、何か関係があるのだろうか?



「中身が違うってどういう事ですか?

マリアは純粋に、貴方の事を慕っていたんですよ!

洗脳でもしたっていう意味なんですかっ?!」


捕虜という立場になってから、初めて僕は声を荒げた。

こいつの人を人と思わない、その態度に我慢が出来なかったから。



それなのに、真鍋は動じる事もなく、


「あ、ちなみにハヤトに拒否権はないからね。

私達の命令に背いたり、裏切ったりしたら、アンタの家族を皆殺しにするから。

じゃあさっさと向かって頂戴。

車はもう用意してあるから」


用件だけ一方的に話すと、足早に部屋から出て行った。

僕の言葉なんて、サラサラ聞く気がないらしい。

すでに僕は人間ではないのだ。


鎖を引っ張られ無理やり立たされると、車が駐車してある方へ無言で歩き始めた。

真鍋から聞いた言葉だけじゃ、マリアや涼に何が起こってるのか?わからない。

自分の目で見て、状況を確認しよう。



大人しく車へ乗ると、そのまま輸送される。

首輪と手錠をされたまま。


僕の家は比較的裕福である。


両親共に国家資格を持ち、高学歴のエリート。

大きな庭付きの豪邸に、父母と僕の三人暮らし。

それに、通いのお手伝いさんが2人居る。



両親が高学歴なら、僕もそれなりの結果を出さなくてはならない。

常に学年でトップの成績を修め、両親にとって 期待通りの自慢の息子 へと登りつめた。



学業だけじゃない。

運動も完璧にこなさなくてはならない。

足だって早くないといけないし、誰とでも社交的に話さないといけない。

色んな事を極めてこそ、他人から羨ましがられる存在になれるんだ。



休日は庭のテラスで、家族3人お茶を飲みながら談笑する。

まるで何処かの国の貴族みたいな生活だろう?



ドラマのような家庭。

誰もが羨ましがる、理想の家族。

しかし、僕達家族には秘密がある。



本当は3人家族じゃない。

父と母、通いのお手伝いさんと僕。

5人だけが知る真実、それは・・・・・・。


僕には1人、兄がいる。

健常者なら、その存在を隠す必要は無かっただろう。

しかし、その兄の知能に障害があるとわかった時、両親は兄の存在を抹消し、誰の目にも映らぬよう存在を隠した。



後に僕が生まれる。

僕自身に障害がないと知ると、両親は僕に英才教育をし始めた。



「貴方は私達の誇りよ。私達の顔に、泥を塗る事にないよう、努力を怠らずにね」


・・・・・それじゃあまるで、兄の存在自体が泥みたいじゃないか・・・・・・。



高学歴の両親から生まれた僕の知能は、生まれ持って高かった訳ではない。

勉強漬けの日々。



100点満点のテストでは、100点を取らなければ0点と同じ。

それがうちの両親の考え。


僕には、1つのミスも許されなかった。



「あの子の分も、お前は頑張りなさい」


常に肩には、兄の存在が圧し掛かる。

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