第94話過去との決別 2

グラウンドには、全校生徒が整列していた。

俺達の姿を見た瞬間、ざわめきが起こる。


「まずは、私から紹介を・・・・」


そう言うと、校長は俺の横をすり抜け、設置している台へと上がる。



「静かに!これから紹介するのは・・・・」


と、校長が静かにするよう注意をしても、生徒達は私語を止めようとはしない。

それどころか、ざわめきはどんどん大きくなっていく。



「何あの格好、ダサくない?」

「頭にバンダナを巻いてる奴って、男?女?」

「マジ、キモイし・・・」

「あの人カッコよくない?背高い子」

「つーか、なんであの女、一人で黙々とパン食ってんの?」

「全員微妙~。ダサい」



愚かな奴らめ。

法律を全く理解していない。

お前達がした、その行為こそが、法律違反そのものなのに。

それをすれば、命を奪われる事がわかっていない。


いや、元々こいつらを生かすつもりなんてなかった。

俺を死へと追い詰めた罪を、この学校に出入りする全てに人間に償わせるつもりだ。

だから、紹介や挨拶なんていらない。

全員殺すまでだ。


右手に意識を手中し、漆黒の翼を出そうとした時、



「もう・・・・、お前等グダグダうるさいんだよぉおおおおおおおお!!!!!!」


そんな叫び声と共に、鈍い音が鳴り響く。

何が起こったのか?わからなかった。

だって、一番意外な人物が意外な行動を取ったから。



「きゃあああああああ!!!!」


それを目の当たりにした生徒達は、叫びながら、逃げ始める。



「逃がすか!こっちはねぇ!右手が限界なのよ!!!

そんなクソ長い挨拶なんて聞いてられるか!!早く、殺さないと!!」


一心不乱に、ミカはヌンチャクで手当たり次第に生徒達を殴りつける。

殴られながらも、必死に逃げようとする奴。

動けず、その場に蹲る奴。

そして、反撃しようとする奴等、行動は様々だ。


そして何より、いつも嫌々モンスターを討伐していたミカが、

何故今回は、一番意欲的に狩るのだろう?と、疑問に思っていると、


「早く!!血が欲しい!!血があれば、食べるのを止めても、痛みを我慢しなくて済む!!

黙って死ねよ!!お前等!!!」


あぁ、なるほど。

ミカの雄たけびで全てが解決した。


漆黒の翼を植え込まれた俺達は、傷が治るのが遅い。

傷が治るのが遅いという事は、その傷が塞がるまで痛みに耐える必要がある。

カスリ傷程度なら我慢出来るけれど、指を切断されたミカの苦痛は、想像を絶する物だろう。

本来なら、その痛みは傷が治るまで、24時間ずっと耐え続けなければならないはず。

しかし、とある条件を満たせば、一時的にその苦痛が和らぐ瞬間があるらしい。

そのとある条件とは、漆黒の翼に使う以上の栄養を摂取する事。

今までは食い物からその栄養を摂取していたらしいけど、食うにしたって限界がある。

ハヤト曰く、昨日の夕食からずっと食い続けてたみたいだし、

チマチマ食うくらいなら、モンスターを殺した方が手っ取り早い。


モンスターを殺し、その血を吸い取れば、漆黒の翼も満足し、苦痛が和らぐ。

自分の痛みを和らげる為に、人を殺すミカはなんてクズなんだ。

笑える。



「俺達もミカに負けてられない。さっさと狩るぞ」


俺も剣を取り出すと、逃げる生徒達を追いかけ、斬っていく。

マリアも討伐をし始める。

しかし、ハヤトだけは戸惑った様子で、



「え?だって、誰を狩ればいいんだ?!どの人が法律違反をしたのか?わからないじゃないか・・」


まだいい子ちゃんを続ける。

全く、イラつかせる奴だ。



「はぁ?何言ってんの?全員討伐に決まってるだろ!

お前はさっきやつらのざわめきが聞こえなかったのかよ!

俺達を侮辱した罪を、全校生徒に償わせるんだ」


・・・・本当は別の理由だけど。

でも、それを説明する必要はない。

とにかく、全員殺せばいいんだ。



「そんな事をしたら、後で問題が起こるに決まってる!無罪の人を殺すなんて冤罪は許されない!」


全然わかってないな、こいつ。

反吐が出る。



「問題?そんなの起る訳ないだろ。

教師も生徒も全員殺すんだ。問題を起す人間なんて、存在しないんだろ」


ハヤトは頭を抱え、その場にしゃがみこんだ。

こいつ、マジでこの任務向いて無さ過ぎ。

一番のお荷物はミカだと思っていたけど、それは違う。

一番邪魔なのは、ハヤトだ。

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