第91話お友達 5

「っぷ、ありがとうございました~」


全ての食事を完食した俺は、一息つく暇もなく金を払い店を出た。

そんな俺の姿を見て、店員は必死に笑いを堪えながら会計をする。



「・・・・・本当に全部一人で食ったし」


「あいつ、化け物なんじゃね?・・・・・っく・・・・」



背後から聞こえてくる従業員の声。

あー・・・・マジうるせぇ。

俺が誰だか、まだわかってないから、まぁ仕方ないんだろうけど。

だからといって、バカにしていいとは限らないだろ。




昨日新しい法律が出来たばかりだから、まだ国民達はその自覚がないらしく、

目の前を通り過ぎたカップルが、こちらをチラっと見ると、


「キモッ。何あのダッサイコート、ありえなくない?」


笑っていた。

何が キモッ だよ。

お前等の顔の方が、余程キモイ。

・・・・と、言いたい所だったけれど、下手に絡まれたくないから、スルー。

あー・・・・・やりにくい。

もっと、法律が世の中に浸透していれば、ザクっとヤる事が出来るのに。





ファミレスを出たけれど、何処にも行く場所がない。

家になんて、絶対に帰りたくないし。

だからといって、野宿するのは気が引ける。


じゃあ、何処に泊まればいいんだよ!!!


とりあえず、宿泊施設がないか?ブラブラ歩く。

一応ビジネスホテルを発見!・・・・したのだけれど、ここはどうやって泊まるのだろう?

直接カウンターに行き、「泊まりたいんですけど」って言えば、泊まれるのか?

といっても、まだ未成年の俺を、簡単に泊まらせてはくれないだろうし。


ラブホテルも見つけたけれど、こっちは別世界。

全く泊まり方なんて、わかんねぇーし!



あ~~~~~!!!!

なんでこんな事で悩まなくちゃいけないんだよ!

こうなったのも、全部ハヤトのせいだ!!

ハヤトが家にでも帰れなんて、余計な事を言うから。


結局、何処にも泊まれないまま、人気が無い公園のベンチに横になった。

英雄になる事を約束された俺が、まさかここで一夜を明かすなんてな。

まぁ、それも英雄になれば 笑い話の1つ にでもなるか。


こんな所で、じっくり眠れる訳もなく、ウトウトしながら、夜が明けるのを待つ。

朝日が昇った頃。

眠たい目を擦りながら、皆が泊まるホテルの方向へと歩いた。

・・・・・寝不足だ、完全に寝不足だよ。


ホテルのロビーへ入ると、従業員と目が合った。

俺は、見た目は完全にまだガキだけど、ClearSky の制服を着用している。

まだ、一般市民には知名度がないこの制服だけど、わかる人間にはわかるみたいで、深々と一礼をした。



気分がいい。

俺よりも、10歳以上年上の大人に、頭を下げられるなんて。

今まで、誰かに頭を下げて貰った事なんてなかった。

むしろ、俺は今までゴミ扱いをされてきたのだから。


夕飯を食ったファミレスの従業員とは、大違いだ。

早く、俺達の事が 国民全員に浸透すればいいのに。



一度自分の部屋に戻ると、軽くシャワーを浴びた。

このままの状態で、ミカに会えば、あいつの事だ、文句を言うに決まっている。

人の事ばかり文句を言うのは、自分自身に自信がないからだ。

だから、他人を蹴落とし、自分を良く見せようとする。

マジ、カス過ぎ。


まだ髪の毛が半乾きだったけれど、そのまま部屋を出た。

早く飯を食いたい。

腹が空いたってよりも、栄養を補給したいから。



食堂に入ると、すでにマリアは朝食を食べていた。

朝食はバイキング形式で、トレーに適当に食材を山盛りにすると、マリアの斜め前の席に座る。

席に座った瞬間、一瞬目が合ったけれど、すぐに目を逸らされた。

マリアの隣の席には、昨日真鍋さんが手渡した箱が置いてある。

風呂敷に包まれた謎の箱。

何が入っているのだろう?

まぁ、いっか。



近くに座ったからといって、何も喋らない。

俺達には、お互いを気にかけて会話をする必要がないんだ。

会話なんてしなくても、俺達の考える事は同じ。

何故わかるのかって?それは、俺達が似ているから。




二人で無言の空間を過ごしていると、



「あ!涼じゃないか。

どうだった?久しぶりに家族と会った感想は」


爽やかな声が聞こえる。

ハヤトだ。

触れたくない事を聞きやがる、お節介焼き。

わざとなのか?イライラさせるぜ。

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