第90話お友達 4

「別に僕達に気を使う必要なんてないのに。

家族とか友達に会いに行ってもいいんだから」


ニッコリ微笑むハヤト。

悪気はないんだろう。

むしろ、俺に気をつかってくれているんだと思う。


だけど・・・・・・・・・、友達も家族も 居ない 俺にしてみたら、それは大きなお世話で。



「いいって。適当にするから、気なんて使わないでくれ」


やんわりと、断ったつもりだったんだけど、

それが、 やんわり 過ぎたみたいで・・・・・。



「そんなんじゃダメだ!

今度、いつココに戻って来れるか?わかんないんだから、さぁ!行っておいでよ!」


ホテルの出入り口に一歩入りかけていた、俺の腕を引っ張り、外へと追い出した。



「いや、だからいいんだって・・・・・」


「ダメだ!早く行ってこいよ!

むしろ、泊まってきてもいいから。

真鍋さんから連絡があれば、僕が上手いこと言い訳しとくって」



大きなお世話なんだよ。

家になんて帰りたくない。

あいつらになんて、会いたくないんだ。



ホテルの前では、万遍の笑みで手を振るハヤトの姿がある。

だから、ホテルに戻る事は出来ない。



自宅へ帰りたくないから、友達の家にでも泊まろう!・・・・なんて考えても、

泊めてくれる友達が居ない。


どうしたらいいんだよ、俺。



家に帰れない理由は、会いたくないから だけじゃない。

他にも理由がある。


それは、Clearsky から支給された給料を、親に仕送る事なく止めてしまった事。

きっと怒ってるに違いない。

顔を合わせたら、なんて言われるか・・・・。



あー・・・・、嫌だ、帰りたくない。

でも、行く場所がない。


重たい足取りで、俺は家の方向へと歩き始めた。

気分は最悪だ。


ダメだ・・・・、吐く・・・・・。

と言っても、吐く物なんて、胃の中に入ってないんだけど。


家へどんどん近づくたびに、吐き気が上がってくる。

あの時と一緒だ。

まだ学校へ通っている頃、通学途中に沸き起こったあの感覚。

学校へ一歩ずつ近づくたびに、喉の奥底から、ジワジワ湧きあがってくる アレ だ。



学校や家族といった、呪縛から解き放たれたと思ったのに、

なんでまたこの吐き気が起こるんだよ・・・・。


負けてたまるか!

今の俺は、あの頃とは全然違うんだ!


吐き気を我慢しながら、一歩ずつ近寄っていくけれど、

家に近づけば近づく程、吐き気は酷くなり、やがてクラクラと視界が歪んでくる。



ヤバい・・・・。

倒れそう・・・・。

こんな場所で、倒れる訳にはいかないんだ・・・・。



その場に踏みとどまり、眩暈が治るのを待つ。

しばらくすると、少しずつ眩暈が治まり、そのすきに近くにあるファミレスへと逃げ込んだ。




何か食わないと・・・・・。

昨日からモンスターを討伐していないんだ。

漆黒の翼の栄養分を補給しないと・・・・。


ファミレスへ入ると、とりあえず



「ココからココまで、全部持ってきて」


適当に食べ物を注文する。

食べたい物を悠長に食っている暇はない。

とにかく、早くたくさん栄養を補給しないと・・・・・。



一人で大量のメニューを注文した俺を、従業員達がヒソヒソ笑いながら話していた。


クソ野郎が。

会話内容が、丸聞こえなんだよ。



つーか、それ。

俺への悪口なんじゃねーの?

聞こえたこっちは、気分が悪くなったし。


って事は、あいつらは処刑対象のモンスターだ。


でも、ここは許してやろう。

だって、あいつらを殺したら、俺の食事を作る人が居なくなるから。


命が救われたな。

もし、お前等にその役目が無ければ、俺は法律に則り、裁く所だったよ。

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