第54話晩餐 3
「まぁ、とりあえず女王に会う事が出来る。
丁度、話したい事があったし、いい機会だ。楽しみにしようか」
昼食を食べ終えたハヤトは、そうポツリと囁くと、椅子から立ち上がる。
平和好きなハヤトが、ピリピリしたオーラを出すなんて珍しい。
「話したい事って何?女王様は、優しい人だよ!」
そう言うと、
「確かに優しいかも知れない。
でも、庶民の生活という物を知らなさ過ぎる。
僕は、庶民の立場として、話したい事があるんだ」
そう言い、トレーを持ち去っていった。
女王に話したい事って、何だ?
つーか、ハヤトが自分より、身分が上の人の事を呼び捨てするなんて珍しい。
いつものあいつなら、 女王様 と呼ぶはずなのに。
「でもさー、真鍋って結局は、自分の力でClearskyを発足させたんじゃなくて、
女王のコネを使ったって事が、今回の事でよくわかったわね。
この大きな施設も、私達のついているコレも、全て、女王の権限があって出来た事。
あいつなんて、自分一人じゃ、何も出来ない。
何の力もない、ただのマッドサイエンティスト。
そんな女に、毎日偉そうに指示されてる私達って、マジ可哀相すぎるわ」
嫌味をダラダラ言うと、ミカもトレーを持ち、席を立った。
そりゃ、ただの 一科学者 が、人体実験なんて出来るはずないよ。
たとえバックが居たとしても、ここまでこれを作り上げた真鍋さんは凄い。
俺は、真鍋さんを尊敬する。
「真鍋さんは凄い人よ。
誰が何って言おうと。
あの人、きっと何かを抱えているわ。
私達にも言わない、何かを。
私は、大人の中で一番真鍋さんが好き」
そう言うと、マリアもトレーを持ち、席を立った。
テーブルに残されたのは、俺だけ。
俺も・・・・・真鍋さんの事が好き。
それは、マリアの真似をしたからではなくて、俺に居場所をくれたから。
真鍋さんが居なかったら、俺、きっと今頃、死んでたと思うから。
午後のモンスター討伐を終えると、フロアに真鍋さんが立っていた。
目が合うと、ニッコリ笑いながら、
「お疲れ様。女王主催の晩餐は、後1時間後に始まるから、それまでに皆お風呂に入って汚れを落としてね。
それと、晩餐には、コレを着てちょうだい」
一人ひとりに、紙袋を手渡す。
「これは何?ドレス?!」
嬉しそうな顔をしながら、ミカは紙袋を開くと、
「何コレ・・・・・ダッサ・・・・」
中を見て、テンションが下がった。
しかし、マイペースな真鍋さんは、そんなミカの態度なんて、全く気にならないみたいで、
「漆黒の翼の制服よ。いずれ、この施設から出て、直接モンスターを倒す時に着てもらう物。
これが貴方達の正装になるから。じゃあ、また後でね」
言いたい事を言うと、ドコかへ消えていった。
この施設の外に出る事が、いつか出来るのだろうか?
直接モンスターを倒すって、何だ?
よくわからないけれど、まだ知らなくたっていい。
だって、真鍋さんの言う事を聞いていれば、俺は 生き続ける 事が出来るのだから。
でも、もし、この施設を出る事が出来るのなら、空が見たい。
外の空気を思いっきり吸いたい。
澄み渡った空を、自由に見たい。
風呂に入ると、いつもより念入りに身体を洗った。
女王と会うんだ。
汚れた状態でなんて、会えない。
後、あの時借りた、ハンカチも返さないと。
寮母さんに頼んで、洗っておいてもらったまま、部屋においてあるはず。
でも、何って言って返せばいいんだろう?
ありがとう で、良いのかな?
異性の子に、物を借りた事がないから、わからない・・・・。
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