第53話晩餐 2
「今日は、どうしたんですか?」
俺が彼女に声をかけると、
「招待状をお持ちしました。今日の夕食に、お二人を招待しようと思って」
彼女は、後ろに隠していた右手を目の前に出す。
その右手には、2通の封筒が握られており、それを俺達に差し出した。
「夕食の招待?アタシ、アンタの事知らないんだけどー」
ミカは両腕を組むと、彼女の全身をにらみつける。
すると、彼女はクスクス笑いながら、
「あら、私は知っているわ。だって、私は貴方の飼い主だもの」
おしとやかな、彼女の口から出たとは思えないような事を言い始めた。
「え?!」
「飼い主ぃいい?!」
俺とミカは驚き、思わず声を荒げてしまう。
しかし、彼女は相変らずのマイペースで、
「そうよ、貴女の飼い主。
色々お話がしたいから、一度皆さんで一緒に食事でもいかがかしら?
身体を張り、頑張っている貴方達を、是非おもてなししたいの」
まるで、それが当たり前みたいな言い方をする。
「飼い主って事は・・・・アンタ・・・まさか・・・・」
ミカの顔が段々青ざめていく。
何か知っているのだろうか?
すると、彼女は
「ではそろそろ失礼するわ。お邪魔してごめんなさい。
招待状は、真鍋に預けておくわね。では、ごきげんよう」
軽く会釈をすると、どこかへ歩いていった。
彼女の姿が、完全に見えなくなった後、
「あの人は誰?知ってるの?」
ミカに問いかけると、
「あの人は・・・・女王よ・・・・。この国の女王・・・・」
ガタガタ震えながら、そう答えた。
女王・・・・?まさか、あの人が、この国を司る、女王だというのか?!
あまりの出来事に、俺も動揺していた。
女王が、何故俺達にわざわざ会いに来たんだ?・・・・わからない。
昼食を食べに、食堂へ行くと、
「涼!ミカ!大変だ!女王が来たんだ!」
普段より、テンションが高いハヤトに手招きをされた。
ハヤトの真正面には、冷静に昼食を食べるマリアの姿が見える。
俺も、トレーを受け取ると、マリアの隣に座った。
ミカはすでに、ハヤトの隣に座っている。
「アタシ達の所にも、来たのよ!あのブリッコ女王が!」
ミカは、苦い顔をしながら、ハヤトに必死に女王の悪口を言い始める。
・・・本当に、ミカって性格が歪んでるなぁ。
だから、嫌いなんだよ。
「食事に招待したいって、どういう事なんだろう?」
悩むハヤトに、
「意味なんてない。ただ、私達と食事したい、それだけの事でしょう」
スープを飲みながら、冷静に答えるマリア。
マリアが言葉を発するなんて、意外。
いつも、無言で食事していたから。
口には出さず、驚いていると、
「うわっ。ロボットちゃん、喋るんだ・・・」
ミカが嫌そうな顔をしながら、マリアを見る。
マリアの足がロボット足だからって、ロボットちゃんなんて呼んでいる訳なんだけど。
そう呼ぶ事により、マリアが傷付くとか、考えないんだろうな・・・コイツは。
「マリアが喋ったら、悪いのかよ!」
黙ったままのマリアの代わりに、言い返すと、
「なんで、アンタに怒鳴られなくちゃいけないのよ!
もしかして、マリアが好きだとか?うわっ!キモッ!」
ニタニタしつつ、嫌がるミカ。
本当にこいつの事、俺嫌い。
やる事が、ガキ過ぎるから。
そして、この一連の行動を見ているにも関わらず、何も言わず黙ったまま、
庇おうともしないハヤトの事も、大嫌いだ。
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