第39話混乱 2
「何言ってんのよ!この身体はアタシの身体よ?
アタシの意識が無いのをいい事に、勝手にこんなの付けちゃってさ!
訴える事だって出来るんだからね!」
アタシは真鍋に向かって、そう怒ると、不適な笑みを浮かべながら、
「貴方の身体じゃないわ。その身体は女王陛下の物よ。
勘違いしないでちょうだい」
意味不明な言葉を吐いた。
「女王陛下の物?意味わかんない!
これは、正真正銘アタシの身体!
女王陛下になんて、一回も会った事ないし!」
そう、アタシは女王陛下とは、喋った事も会った事もない。
そんな人の所有物にいつなったのだろうか?全く理解の出来ない話だ。
しかし、真鍋は相変らず、不適な笑みを浮かべたまま
「いいえ、女王陛下の物よ、だって貴方、死のうとしたんでしょ?
死のふちから救ったのは、女王陛下よ」
なんて言い始める。
確かに、あの日。
アタシは死のうと思った。
けれど・・・・
「死のうとしたのは事実だけど、今、アタシは生きている!
死んだのなら、どうしてアタシはココに居るの?
オカシイでしょ?
生きているのなら、アタシの身体はアタシの物よ!!」
ここまで言ったのなら、真鍋は黙ると思っていた。
しかし、真鍋はやはり変わる事なく・・・・
「貴方はね、自殺に失敗したのよ。助かったの。
病院に運ばれ、そのまま植物状態に陥ったわ。
本来なら、そのまま死ぬまで眠ったままで居れたのだろうけれど・・・・、
調べたの。
貴方の過去を。
恐ろしい過去ね、なんて身勝手な人なのかしら。
その過去を知って、女王は酷く怒ってね。
そのまま眠るなんて、許さない! 罪を償わせるべき という判断から、
脳にIDチップを埋め込んだのよ。
もう貴方は以前の貴方とは違う。
私が作った、殺人兵器。
その身体は、女王陛下の物。
貴方に、その身体を貸しているだけ。
反論するなんて許されないわ。
だって、その身体は女王陛下の物なのだから。
貴方は、ただ私の命令に従い身体を動かすだけの存在。
ミカ・・・・貴方はもう、死んだのよ」
・・・怖い。
身体がガタガタ震え始めた。
神をも恐れる行為をしておきながら、それを 当たり前 のように話す真鍋が怖い。
どうして、あの時、アタシは死ななかったの?
お願い、殺してよ!
また真鍋は、来なくなった。
後は、看護師さんが業務的に点滴を取り替えるだけ。
「アタシはどうなるの?
いつ真鍋・・・さんは来るの?」
問いかけても、一切答えてはくれない。
ただ、ベッドの上で食事をし、眠るだけ。
生かされてる状態・・・・・まるで家畜と同じだわ。
そんな退屈な日々も終わりを迎え・・・・。
あの日はやってきた。
「おはよう。さあ、これに着替えて。行くわよ」
久しぶりに、病室へ真鍋がやって来たかと思えば、洋服をアタシに手渡した。
着替えを受け取ったが、この先どうなるのか?わからなかった私は、中々着替える気が起こらない。
「ドコに行くの?」
「貴方に知る権利はないわ。早く着替えて頂戴。時間が無いの」
キツイ言葉とは裏腹に、真鍋はニッコリ顔。
渋々着替えると、真鍋の後をついていく。
外の世界にやっと出られたと思ったら、すぐに車の中に押し込められた。
ゆっくり、外の空気を吸えないまま、護送されるなんて、ね。
車の中では、一言も会話しないまま、目的地に辿り着いた。
エレベーターに乗り、ドコかのフロアに着くと、
真鍋は、エプロンをしたおばさんに声をかけた。
「あ!寮母さん! この子が新しくココで生活する ミカ よ。
ハヤト と 涼 を、呼んでくるから、逃げないように見張っていて貰える?」
アタシの事を軽く紹介すると、ドコかへ歩いていく。
逃げないように・・・って。
ココがドコかわからないのだから、逃げるのなんて不可能でしょうが!
真鍋の姿がこちらから見えなくなると、寮母と呼ばれた人が口を開いた。
「あの人 根は悪くない のよ。
ただ、自分のやりたい事を見つけると、そこに情熱を注ぎすぎちゃう所があってね・・・・。
許してあげてちょうだい」
真鍋をフォローしたつもりなのだろうけれど、あの人が私に言った数々の言葉を思い出すと、
諸悪の根源 に思えた。
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