第30話マリア 7



「皆、今よ!門まで全力で走るの!」



時は来た。

私達は、檻から出る日が来たのだ。



しかし、そんな私達の願いは、儚く消え去りー・・・・。



自分は必死で走っているつもりでも、あの狭い空間で1日いっぱい、ただひたすら床を見るだけの生活。

足腰は弱り果てていて、上手く走る事が出来なかった。



門に辿り着く前に、一人、また一人と転び、シスターに捕まっていく。



だれか一人でいい!

外に出る事が出来ればー・・・・!




私は必死に、マリアお姉ちゃんの手を握り締めながら走っていた。

でも、もう限界!

息が苦しいの!

上手く呼吸が出来ないわ!


走るって、こんなに大変だったっけ?




諦めかけていたその時ー・・・・。





「ねぇ、アリス。貴方はこのまま走って逃げて」


マリアお姉ちゃんが、息を切らしながら、ポツリと囁いた。



「うん、勿論!一緒に逃げましょう!」


呼吸が乱れながらも、必死に私は返事をする。




「それは無理。もう、シスターがそこまで来ているから。

後ろを振り向かないで。

ただ、前だけ見て走るの。


貴方は逃げ切って、そして、私達を助けて。

お願い、約束よ?」



そういうと、マリアお姉ちゃんの手が、私の手から離れた。



「いやだ!」


一緒に逃げるって言ったじゃない?

私は立ち止まり、後ろを振り返ると、マリアお姉ちゃんはシスターに殴られ、地面に倒れこむ瞬間だった。



ゴムボールのようにはじけ飛ぶ、マリアお姉ちゃんの身体。

怖い!シスターが怒っている!



助けたいけれど、今の私には何も出来ない・・・。

誰かに助けを求めなくちゃ!



私は、また走り出した。

門まで後もう少し!


逃げ切ってみせる!

マリアお姉ちゃんが、守ってくれたのだから!

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