第27話マリア 4

ココに戻ってきてから、どの位の時間が過ぎたのだろう?

またあの部屋に閉じ込められたまま。

時計がないから、今が何時なのか?もわからないわ。



周りの子達は、相変らず、座り込み床を見たまま、言葉を発しようとはしない。


私も、マリアお姉ちゃんが心配で、言葉が出なかった。




それからまた、時は過ぎ・・・・。

静かな室内に



ペタペタ・・・・。


誰かが廊下を歩く音と、



ズリイ・・・・ズリィ・・・・・。


何かを引きずる音が響いた。

その音は、どんどん大きくなる。




「いやだぁ・・・」


誰かがそう囁き、両手で耳を塞ぐ。


また別の子は、両手で頭を抱えた。




「何が起こるの?」


そう私が言葉を発した瞬間、部屋の扉が勢いよく開き、シスターが見えたかと思うと



「消灯の時間です!早く布団を敷いて、寝なさい!」


大きな声で怒鳴った。



その言葉を聞くと、皆一瞬体がビクついたものの、すぐに立ち上がり、布団を敷き始める。



「後、マリアとトムは、体調が悪いみたいなの。

血で布団が汚れるといけないから、この子達の布団は敷かず、いつものアレで寝かせてあげてちょうだいね」



そう言うと、グッタリしているマリアとトムを、引きずり、部屋の中にほおり投げた。


血だらけのマリアお姉ちゃんと、トムと呼ばれた子の姿を見て、私は思わず、息を飲む。



「じゃあ、皆さんおやすみなさい」


まだ布団を敷いている途中だというのに、シスターは挨拶を済ませると扉を閉め、何処かへと去っていった。


シスターが完全に消えたのを確認すると、私はマリアお姉ちゃんの傍へ駆け寄り、心臓に耳を当てる。



ドク・・・ドク・・・・。


心臓は動いていた。

良かった・・・・生きてる・・・・。



自然と、涙がこぼれた。




「ごめんね、マリアお姉ちゃん。

こうなったのは、私のせいだ・・・・」


マリアお姉ちゃんの心臓に耳をあてたまま、私は謝り、そして彼女のこの姿に泣いた。

すると、



「私は大丈夫。平気よ」


か細い声でそう囁くと、私の頭を優しく撫でた。



「マリアお姉ちゃん!」


驚き顔を上げると、マリアお姉ちゃんは目を開け、こちらを見てる。



「大丈夫だから、泣かないで。

それより、布団を敷かないと・・・シスターにお仕置きされてしまうから・・・」


私に布団を敷くよう指示を出した。


なんで、こんな時まで指示を出すのだろう?

身体はボロボロで、喋るのだって辛いはずなのに!


・・・きっと、どんなに喋るのが辛くても、必死に私に指示を出すのは、

私がお仕置きされないよう、守る為だ・・・・。



見よう見真似で布団を敷きと、そこへマリアお姉ちゃんを運ぼうとした、その時・・・・。




「ダメ、マリアはこっち。布団に寝かせたら、シーツに血がついてしまう」


そう言い、別の子が指をさしたその場所は、赤黒い染みが大量についた、1枚の布だった。




「ここに寝かせるの・・・・?ダメよ!こんな雑巾みたいな所!

傷にばい菌が入ったらどうするの? 布団は?このまま寝たら風邪引いちゃう!」



「でも、布団に寝かせたら、シスターに怒られて・・・お仕置きされてしまう・・・。

ダメ、マリアはココで寝かせなくちゃ!私達がどうなるか・・・・」



そんなやり取りを聞いていたマリアお姉ちゃんは、



「いいの。私は平気だから、アリス?お願いがあるの。

私をあの場所まで、連れて行って?

一人で歩いていけそうにないから・・・・」


弱弱しい指で、マリアお姉ちゃんが指した場所は、あの染みがついた布だった。

なんで?どうして?

そんな疑問が沸き起こったけれど・・・・。でも、逆らえない・・・・。

ごめんね、マリアお姉ちゃん。



私ともう一人の子で、マリアお姉ちゃんを支え、布の上まで連れて行った。

たどり着くと、ゆっくりマリアお姉ちゃんを寝かせる。



布の上に寝かせると、マリアお姉ちゃんは


「ありがとう、おやすみなさい」


そう言い、静かに目をつぶった。



怖いわ・・・・、明日、マリアお姉ちゃんは目を開けてくれる?

不安でしかたがないの。


居なくならないで!ずっと傍に居て!

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