第63話休み

 イルミネーションはそれは見事でした。『彼』ともそれまでになく自然体で話すことができました。


 つき合っていた人が障害者だった為か、桜の周りに対する態度も大分柔らかくなっていました。


 移行でもそれなりに楽しくやっていましたが、それでも時々、嫌な気持ちに包まれます。


『お前は誰よりも愚かな障害者だ』


 桜の妄想です。この台詞を言うのは、過去の演劇の人であったり、東京の声優学校の先生であったりしました。


 ある日、桜は物凄い虚無感に襲われます。


 自分の人生、何でこんなんなんだろう。


 もっと、輝かしくはなかったとしても、こんな虚しいものではなかったはず、だった。


 桜は移行にはいられないと思いました。


 家に籠ります。


 そしてまたあることを決めました。


 小説を書こう。


 私の虚無感も、小説を書き上げたら変わるかもしれない。


 桜は小説の書き方の本を買い、見よう見まねで書き始めました。

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