第47話働くということ

 普通の仕事をするのは難しいということを、桜も理解していました。


 仕事にしろ、演劇にしろ、自分は何もできませんでした。その上、統合失調症もとなると……


 ハローワークに行き、みどりの窓口で障害者求人を探そうとしましたが、求人表を見て桜はがっかりしました。


 事務、プログラマー、オペレーター、桜にできそうな仕事ではありません。


 辛うじて清掃の仕事がありますが、四時間くらいしか働けないのです。


 窓口で、桜は職員に愚痴を吐きました。


 ただでさえ、薬を飲み始めたとはいえ、落ち込んだままなのです。


 演劇を辞めた今、桜の気をまぎらわせるものは仕事しかなさそうです。何もない求人を前にして、桜にできることは社会への不満を訴えることだけでした。


「もう、どこにもいたくないの。家にいると病気を思い出して怖い。外に出ると人の視線が気になる。どこにもいたくない」


 職員は困った様子でした。けれど、同情もしたようで、


「相談室の人がハローワークにくるから、会ってみませんか」


 と言ってくれました。


 何か、色々と相談ができ、解決の糸口をつかめるかもしれません。


「よろしくお願いします」

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