第46話鳴らない電話

 新たな病院に、桜はきていました。


 お母さんも一緒です。


 待ち合い室に二人で座ります。親子で外出したのは本当に久しぶりでした。


 お母さんはとても疲れた顔をしていました。桜も、どこか朦朧として疲れきっていましたが、自分の不調をごまかす為に、お母さんの肩を叩きました。


 病院は、しっかりと桜の病気を見つけてくれました。


 統合失調症。


 幻覚や幻聴、妄想などがよく知られている症状です。


 発達障害の診断とは違い、桜は純粋に病気が判明してほっとしました。


 薬を出してもらい、幻覚と幻聴は殆どなくなりました。


「どうしてこんな病気になったのかしら。発達障害だけなら、まだ良かったのに」


 お母さんの溜め息、そして後悔に、桜はなんと答えればいいかわかりません。


「きっとインターネットが悪いのね」


 そう言うと、お母さんはパソコンのインターネットを解約し、携帯電話を預かると言って隠してしまいました。


「でも、同期からメールがくるかもしれない」


 桜は男の人と会ったことを話しました。


「そうね、じゃあ一回だけメールをしていいわよ。返事がなかったら、諦めなさい」


 桜はお誘いのメールをしました。返事はありませんでした。

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