第43話追い詰められて

 両親の反対を押しきり、桜は遠くの村へ仕事に行きました。絶えず聞こえてくるようになった幻聴、桜を地獄へと誘うノックの音から逃げる為でした。


 しかし、ダメです。田舎に着いても、ノックの音は消えましたが、今度は色んなものがべつのものに見えてきます。


 仕事の上司は敵国のスパイでした。


 機械の音は死者の言霊です。


 隣で働く人は亡命してきた人に思えました。


 一週間後、桜は家に帰りました。


 また地獄のノック音が聞こえてきます。


 田舎に戻れば、音は止まるかもしれない。


 桜はメールをしました。


『田舎にドライブに行きませんか?』


 宛先は高校で同じ部活であった男子。


 演劇の、発表公演で花束をくれた人です。


 その人なら、桜を遠くに連れて行ってくれるかもしれない。


 当てずっぽうのただの勘。


 返事は暫くしてきました。


『わかりました』


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る