第19話ダメな桜

 連日のミスで頭も痛いし、耳鳴りもします。


 桜は会社に行くだけは行っていました。しかし、職場は地獄絵図でした。


 耳鳴りのせいか、電話は聞き取れません。


 書類への記述やパソコンへの入力は誤字脱字だらけ。


 手書きの字は汚すぎ、戻ってきます。


 電話か書類作成の段階でのミスが原因で、営業の人達は謝罪に走り回っています。


 ミスは、これだけではありませんでした。


 簡単なはずのお茶出しさえ上手くできず、いつもこぼれたお茶を誰かが片づけていました。


 桜の頭は、一言で言うと、パニック。


 あれも、これもやれず、何もかもが中途半端になります。


 我慢を切らしたのでしょうか、営業の先輩がとうとう皆の前で叫びました。


 激昂です。


「お前がしてきた仕事の成果はなんだ! 周りをよく見てみろ、挨拶もしないで、皆を見てみろ! これがお前の成果だ!!」


 そんなことを言われなくても、桜が皆に嫌われていることはわかっている。挨拶なんて桜とはしたくないこともわかっている。


 いいえ、桜はわかっていませんでした。皆が桜に、もう辞めて欲しいと思っていることを。

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