第16話卒業論文

 二年なんてあっという間なのに、卒業論文の締め切りはなぜこうも早いのだろう。


 桜は短大に入って最大の問題にぶつかっていました。


 卒業論文が書けないのです。


「普段のレポートと変わらないわよ」


 ゼミの先生に言われたけれど、どうにもこうにも書けないのでした。何を書きたいのか、漠然としたイメージしか持てず、頭は爆発寸前。


 先生の研究室は、今、桜が独占していました。先生はどこかに行っています。


 大学への編入なんて、考えなくて良かったのかもしれません。先生には編入を勧められたけれど。きっとこのまま就職したら苦労するからって。


 けれど、桜のお母さんは編入学に反対でした。


 働くって、どんなことなんだろうと桜は思いました。いつかは働かなくてはいけないのです。ならば、同級生の多数が就職するこの時期に勉強を終えて働いた方が、気が楽かもしれません。


 卒業論文は、まだ終わっていないけれど。


 レポートなら、書けるんだけどなあ……


 沢山読んだ本も、読み終えると内容が頭からするっと抜けてしまうのてす。


 先生達は、桜の為に最終手段に出ました。図やグラフを、桜に変わって作成。文章だけ桜が書いて、エセ卒業論文のできあがり。


 いいのか、それで。


 桜の思いとは裏腹に、否応なしに未来は、桜を待ち受けていました。


 

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