第13話進路

 三者面談がありました。桜と、担任の先生と、お母さんの三人です。開始早々、挨拶もそこそこに、お母さんが意見を言いました。


「桜は、就職は難しいんでしょうか」


 担任の先生が、えー、と渋い相槌を打ちました。


 就職難の時代です。お母さんの時代とは違い、高校卒業で正社員になるのは狭き門だと、桜は知っていました。


「桜さんの成績なら推薦で短大に行けますよ」


 そうなのです。前もって桜には知らされていたことでした。数学がいつも赤点なのを他の成績が補い、推薦がもらえると聞いて、桜は嬉しく思いました。


 先生はこうも言いました。


「部活もがんばっていますし確実です」


 それでもお母さんは心配そうでした。


 先生とお母さんが桜を見ました。言わなくてはいけない時です。


「私、短大に行きたいです」


 推薦は、指定校推薦でした。小論文がテストされるらしく、先生達の助言を受けながら楽しく勉強しました。


 お母さんも小論文のテキストを買ってくれました。何だかんだで、心配してくれているのです。


 試験の結果を知らせに、担任の先生が全校集会中であったのを廊下で待っていました。


 合格です。


 ほっとしていると、部活の顧問の先生が、ご両親が心配するから早く帰りなさい、と言います。もしかしたら、ご馳走を作って待っているかもしれないよ、と。


 急いで家に帰って、ご馳走はありませんでした。


 合格したことよりも進路が決まったことにほっとして、桜は頭が空っぽみたくなりました。お母さんも、そうであったのかもしれません。


 そうこうしているうちに、卒業、春休みをむかえました。

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