第11話憧れ

 新しい制服を身につけ、桜は緊張していました。とある決意が桜の表情を暗く、かたく、していたのです。


 もう、友達は作らない。


 友達が離れていった中学生時代を思い返すと、桜が傷つくのは友達がいたからだ、と思ったからです。


 もう、誰にも私を苛めさせないし、仲間外れにもさせない。一人でいたら、大丈夫。


 それでもどこかで人恋しく思ったのでしょう、桜は部活に入りました。


 入部早々、合宿がありました。


 必要な返事の他は全く話さない桜に、先輩達は明るく優しいばかりで、悪いな、という気持ちになりました。


 悪いな、という気持ちが重なって、少しずつ、時間が流れると心の氷がとけていく気がしたのです。


 桜は不器用だったので、しばしばおかしな失敗をしました。


 先輩達は自然に失敗をカバーしてくれます。


 私も、先輩みたいになりたい。


 桜は部活を頑張ることに決めました。誰よりも長い時間、部室にいて活動をしました。


 そうすることで、先輩に追いつけると思ったのです。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る