第43話 感傷と願望

通り過ぎていく影を

振り返るのはただの感傷

ぐるぐる回り出す思考が

体を渦へと閉じ込める

もう記憶も曖昧で

その色さえも思い出せないのに

本能は過去を懐かしむ

光る涙は胸に落ちて消えた

この先にあるものを

手に入れたいのはただの願望

痛みの気配を察知してなお

進むことをあきらめられず

暖かな風景が

確かにあった事実だけが

そっと今背中を押して

光る涙は風に溶けて消えた

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