7 逢瀬
称えよ 己の存在を。
崇めよ 己の存在を。
己を評価するのは己。
他人ではないのだ。
そして己を知り尽くすがよい。
己こそが己の理解者。
他人ではないのだ。
わたしは大学生になった。
初めこそ楽しかったが、そのうち課題の提出の連続に疲れ始めた。
でもわたしには健太郎が居る。
それが救いだったのだ。
わたしは相変わらず、教祖と学生の二足の草鞋を履いていた。
健太郎というよき理解者ができて、その二重生活はうまくいっていた。
わたしのまえで健太郎は、わたしが各務であることを意識はしていない様子だった。
今までと変わらず、かるなとして接してくれていた。
あまり各務の話題は出なかった。
健太郎もまた、わたしと各務を混同させないように、努力し、草鞋を二足履いていたのかもしれない。
わたしに各務としてどうあるべきか進言したきたのは、各務として待ち合わせて出会ってしまったあの日だけだった。
あの時健太郎は流石に混乱していたし、わたしではなく各務に会いに来たのであって、それが結果的にわたしだったとしても、健太郎は各務に会ったのだろうと思った。
それ以降わたしと会っても、健太郎はかるなという女と会っているだけで、もう二度と各務とは会っていない、そんな様子だった。
だからわたしも各務としての活動を制限されることなく続けていた。
ありがたかった。
そんな折、健太郎がゴールデンウィークに旅行に行かないかと誘ってきた。
「どっか、近場でもいいから行かね?旅行とか俺らしたことないじゃん」
わたしは嬉しかった。
「いくー!」
わたしは即座に答えた。「どこに?」わたしが続けざまに言うと、健太郎は困ったように
「本当に近場でいいなら鎌倉とか・・・」
と答えた。
「うん!鎌倉いい!」
わたしは無邪気に喜んだ。
そんなわたしを健太郎は微笑みながら見るのだった。
女友達と旅行に行ってくると親には言った。
そこではたと気づいた。
男の人と旅行に行くということは、つまり・・・そういうことだ。
何があってもおかしくないのだ。
わたしはまだ処女だった。それを失う可能性も大いにあるということだ。
健太郎は、付き合って3年余りの間、手を出してこなかったのだった。
大事にしてくれてたのかな・・・。
わたしはそんな風にふと考えた。
しかしわたしはもう待たせるつもりはなかった。各務としても、女としても、成長しなければならない。
わたしは覚悟を決めて、ゴールデンウィークの旅行に挑んだ。
一泊だけのその旅行は、昼間鶴岡八幡宮や小町通を散策して終わった。
旅館についてお風呂に入り、お造りなどの豪華な食事を食べた。
そして夕食の片づけをしてもらい、布団が敷かれた。
わたしたちは窓際の椅子に座って布団がしかれるのを見ていた。
仲居さんが敷き終わり、部屋を出た。
「かるな・・・」
「ん?」
「一緒の布団で寝よう」
「・・・いいよ」
「あとさ」
「なに?」
「抱いていい?」
健太郎の直球にわたしは少し面食らった。そうきたか。
「・・・いいよ」
わたしがそう答えると健太郎は嬉しそうに、「こいよ」と言って手を広げた。
健太郎の元にわたしが行くと、健太郎は優しくわたしを包んでキスをした。
流れでわたしは健太郎の膝に座った。
いつものようにわたしの後頭部に手をやり、キスする健太郎。
この後頭部に触られるのが、わたしは大好きだった。
「ほんとに?」
不意に唇を離して健太郎が言った。
「ほんとにこの先していいの?」
愛おしそうに健太郎はそう言う。手は後頭部を弄っている。ずっと我慢していたのだろう。それが伝わってきた。
「いいよ」
もう一度わたしは言った。そしてわたしから健太郎にキスをした。
キスはいつもより激しかった。
健太郎の呼吸も荒くなった。手はわたしの着ている浴衣の中に入ってきて、直接胸に触った。ノーブラだった。
初めて男の人に胸を触られて、わたしは息を飲んだ。
すると健太郎はわたしの浴衣をはだけさせ、胸を出すと、口にそれを含んだ。
初めての、感覚。
なんとも言えないその感覚に、わたしは小さく声を漏らした。
健太郎は口を離し「布団、行こう」と言った。
わたしは上半身がはだけたまま布団に移動し、座った。健太郎もわたしの前にひざまずいた。
わたしの両肩をそっと抱くと、ゆっくりと押し倒した。
健太郎がキスしようと、わたしに顔を近付けた。
唇が触れるか触れないかの距離にきたとき、健太郎は「なあ」と言った。
「ん?」
「いけないことかもしれないけど・・・」
「なに?」
「今だけ、お前のこと、『各務様でもある』って思ってもいい?」
わたしは少し躊躇われたが「いいよ」と言った。まさに、わたしは各務でもあるのだ。
健太郎は激しくキスをしてきた。そして唇を離したその刹那、うわ言みたいに「各務様・・・」と言った。そしてまた唇をつけた。
その唇は再び胸へと移動し、手はわたしの下半身へと伸びていった。
わたしは身体を堅くした。
しかし下半身の浴衣もはだけさせられ、弄られると、わたしは自然に声が出て、堅くしていた身体も軟体動物のようにぐにゃぐにゃになっていくのだった。
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