第二章

「――!」


 刹那。


 突然伸ばされた天音の左手が私の腕を掴み、ギュウッと力を込めてきた。


「やめて……」


「え?」


 のそりと上げられた天音の顔。


 あの濁った池と同じように淀んだ瞳と、間近で見つめ合う。


 背中に氷を入れられたような感覚を覚え、それが相手の視線のせいだけではないことをすぐに悟る。


「……」


 掴まれている右腕。


 そこに感じる、冷たい真水のような感触。


 こんな蒸した室内に布団をまとって座っているにも関わらず、汗をかいている様子もない。


「明るくなると駄目なの。少しでも暗くないと……」


「天……音?」


「暗い場所じゃないと、落ち着かないから。ずっと、暗い場所に……」


 ボソボソと喋る天音の手をそっと握り返し、屈み込むように上体を寄せる。


「……天音、何の話をしてるの? 明るいと駄目ってどういうこと? 普段は外歩いたりしてたじゃない。どうして落ち着かないの?」

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