第一章

         2


 七月六日、月曜日。


 天音への悪質な嫌がらせから二日が過ぎた。


 あれから車に戻った私と郁代は、瑠璃先輩から来るのが遅いと批難を浴び、意気消沈したままの天音を後部座席に乗せ町まで引き返した。


 それでも車に乗っている間に天音の気分も多少は落ち着いたのか、降りる頃には呼びかけに反応を示すくらいには回復していたから、私自身少しだけ安心することができた。


「ほら、あんたはこっから歩いて帰りな。学校までは送ってあげたんだから感謝しなよ? あ、あと今日のことは絶対に親とかには言わないように。もし言ったりしたら、許さないから」


 そんな台詞を別れ際に吐き捨てて、瑠璃先輩は天音を車の外へ出るよう促す。


 その日最後に見た天音の姿は、フラフラとした足取りで自分の家へと帰っていく、あまりにも弱りきった後姿だった。


「……」


 深夜に雨が降ったらしく、目につく緑からは透明な雫がキラキラと、眩しい光を反射させている。

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