第一章

「まったく、こんなことばっかり付き合わされてやんなっちゃうなぁ。もう瑠璃先輩となんか縁切りたいわ」


 道中、ぼやくように話してくる郁代の言葉にさすがの私もカチンときた。


「そう思うなら、始めからこんなことに手を貸さなきゃ良かったのに」


「……はぁ? あんたがそれ言うの? あんたこそ天音の友達なんでしょ? どうして助けもしないで毎回やられるの見てんのよ。はっきり言うよこの際。わたしとあんたで最低なのは、間違いなくあんたの方だからね。わたしに文句言える立場じゃないことくらいわきまえて」


「……」


 正論を返されて、あっさりと口をつぐまされてしまった。


 私に郁代を責める資格はない。そんなことはとっくに気づいていることなのに、それでもこんなことになるのは、私自身心のどこかで責任を逃れたいという気持ちが働いてしまっているせいなのかもしれない。


 ――郁代の言う通り、最低だ私は……。


 自己嫌悪に唇を噛みしめ、私は天音に肩を貸しながら葉桜と化したトンネルをゆっくりと歩き続けた。

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