第一章

 短い息を繰り返し、ただじっと地面を凝視している友人。


「わ、わたしは知らないからね! 先輩に頼まれて押さえてただけだし、まさか本気であそこまでするとは思ってなかったんだから」


 まだ側に立っていた郁代が、捲し立てるように言い訳をする。


 でも、私も天音もそんな台詞を耳に入れている余裕は全くなかった。


 私は必死に天音の背中を擦り、気持ちが落ちつくのを待つ。


 ――どうしよう、後で病院とかに行かせるべきなのかな。


 的確な判断が浮かばなくて、気持ちが焦る。


 ――でも、下手なことして瑠璃先輩に睨まれるのはやだし……。


「――ボケッとしてないでさ、さっさと天音のこと立たせなよ。マジで置いてかれたらシャレになんないんだからさ」


「あ……」


 思考が凍結する私の横から、郁代が腕を伸ばして天音を掴む。


 都合の良い言い訳だけを残して立ち去るものだと思っていただけに、まだ近くにいたことに少し驚いた。

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