漆黒の聖女

ぱんだ

序章

「なぁ、どこに行く?」


とんっとテーブルの上に乗った黒猫が、広げた地図の上を悠然と歩く。


「…月の花が見たい」


そう答えた少女の瞳は、地図ではなく窓の外に向けられている。


「月の花って…お前…」


人語を操る猫は_否、猫の姿をしているモノは、少女の言葉に戸惑いを隠せない。


何故なら、少女が見たいと望んだ花は、別名『闇の花』とも言われているシロモノ。

夜に咲き、月の如く白銀に輝くところから『月の花』と呼ばれ、夜にしか咲かないことで『闇の花』と呼ばれている。

そして、『闇』は魔の時刻であり、魔の世界。

人を喰らうといわれる『魔』という存在。


人々は『闇』を『魔』を恐れ、嫌う。

『闇』の色を持つ者は、『魔族』と同じと扱われる。


少女の美しい漆黒の髪も、瞳も。

闇の色であり、魔族の色。


人として生まれたはずの少女が持つ、魔族の色。


故に少女は、ひとりで生きている。

唯一愛してくれた両親を失い、ひとりで。


…いや、たったひとり。

少女の傍らには、黒い猫。

『魔』の色を持つ、黒い猫が寄り添っている。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

漆黒の聖女 ぱんだ @blackpanda

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る